研究課題/領域番号 |
19K08802
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岡 晃 東海大学, 総合医学研究所, 講師 (80384866)
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研究分担者 |
浅野 善英 東京大学, 医学部皮膚科, 准教授 (60313029)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / RNAシークエンシング / 繊維芽細胞 / CRISPR/Cas9 / RXRB |
研究実績の概要 |
全身性強皮症 (SSc) は、自己免疫ならびに結合組織の疾患であり、免疫異常、線維化ならびに血管障害との関連することは分かっているが、その病態は十分に解明されていない。研究代表者らはSSc の強いリスク (odds ratio = 9.4)を伴う感受性変異をretinoid X receptor beta (RXRB)遺伝子上に特定した。この遺伝子産物はレチノイン酸を介した抗線維化活性を有していることから、SSc の発症機序への機能的な関与が強く示唆される。そこで、遺伝的なリスク変異に基づいたこれまでにない新たなアプローチにより、SSc のさらなる病態理解を進めることが本研究の目的である。そこで本年度は以下の実験を実施した。 (1) このリスク変異を有する個体の末梢血リンパ球(PBMC)からRNAを抽出、RXRB遺伝子をクローニングし、蛍光タンパクを含む発現ベクターへ組み込んだ。そして、ヒト皮膚由来の初代培養繊維芽細胞へトランスフェクションし、培養後フローサイトメトリーにて陽性細胞のみ分取しRNA抽出した。このステップを異なる3個体の由来の繊維芽細胞で実施した。現在、このRNAを用いてRNAシークエンシングによる網羅的発現解析を行っており、変異の生物学的機能する予定である。 (2) 安定した実験系を確立するために、不死化されたヒト繊維芽細胞をCRISPR/Cas9システムによりゲノム編集し、原因変異を導入する実験を開始した。CRISPR/Cas9システムは多様なゲノム編集が可能な技術であるが、体細胞に対する点変異の導入はまだ困難である。したがって、挑戦的な取り組みであるが、広範な実験が可能となるため、精力的に実施している。 (3) 原因変異を有する強皮症患者由来繊維芽細胞のRNAシークエンシングによる網羅的発現解析に着手し、試料の調整を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画はほぼ予定通りであり、2020年度はじめにはRNAシークエンシングの膨大なデータを得て、大きな成果を得るとともにさらなる展開が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
原因変異導入不死化繊維芽細胞の構築を精力的に行う予定である。この細胞を元に種々の薬剤試験が可能となり、飛躍的な展開が見込めるものと期待している。また、同じく変異導入トランスジェニックマウス作製にも着手する予定で、複数の実験系構築により、多様な展開を期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加および発表の予定であったが、新型コロナウイルスの影響で中止となり未使用となった。RNAシークエンシングに予算を集中しようと考えていたが、サンプル数をそれほど必要でなかったことに加え、価格が安くなっていたため、予定金額を下回った。これらの繰り越し予算は、次年度のメインとなるCRISPR/Cas9システムによる不死化細胞のゲノム編集に集中的に投資して研究を早急に推進する予定である。
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