末梢神経および中枢神経ERK2欠損マウスを用いて掻破行動にあたえる研究をさらに進た。IL-31による掻破行動を観察したが中枢神経ERK2欠損マウスでは掻破行動は減弱しなかった。その一方で、中枢神経ERK2欠損マウスはIL-31によるmechanical itchが減弱していた。ハプテンによる慢性接触皮膚炎を誘導すると脊髄におけるNeurokinin B (NKB)陽性ニューロンの数が増加した。そして中枢神経ERK2欠損マウスではこの増加はみられなかった。したがって慢性接触皮膚炎時の自発的掻破行動にはNKB陽性ニューロンからのERK2シグナルが部分的に重要である可能性が考えられた。慢性接触皮膚炎誘導時には脊髄のNKB陽性ニューロンに加えてUrocortin 3陽性ニューロンにおいてもERK2がリン酸化されていた。Urocortin 3陽性ニューロンは最近になってmechanical itchシグナルを抑制する介在ニューロンである可能性がいわれており、おそらくUrocortin 3陽性ニューロンにおけるERK2シグナルがmechanical itchの伝達に必須なのであろうと思われた。 痒疹と発汗異常との関連を検討するために、多形慢性痒疹と結節性痒疹患者の病変部におけるdermcidinの汗腺周囲への漏出を免疫組織学的に観察した。しかし残念ながら汗成分の漏出を確認できなかった。 ヒト痒疹病変部におけるメルケル細胞の所在と数の変動を免疫組織学的に検討した。しかしヒトメルケル細胞は非常に数が少なく痒疹における病的な変動を評価するに至らなかった。 Neuropathic itchによる痒疹反応患者の症例においてプレガバリンが有効ではとの考えのもと投与した症例において痒疹結節の消退が観察された。痒疹反応における今後の治療や病態を考えるうえで有用な知見といえる。
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