研究課題
慢性骨髄性白血病に対するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に関連した心血管イベント発症の要因を推察するため動脈硬化モデルマウスにイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ(DAS)を投薬し、動脈硬化病変を組織学的に評価した。その結果、DASでは動脈硬化病変の抑制を認めたが、他のTKIでは変化はなかった。次に各TKIと血管内皮障害との関連性を評価した。動脈硬化モデルマウスに各TKIを投薬し、血管内皮細胞を単離してRNA抽出を試みたが、実験手技の確立が困難であった。そこで、DASで動脈硬化病変が抑制される機序についてさらなる検討を行った。DASでは動脈硬化が抑制されるにも関わらず、血清コレステロール値の上昇がみられたことから、その取り込みが障害されている可能性を推察した。そこで各TKI暴露下で骨髄由来マクロファージにおける酸化LDLの取り込みを評価した。その結果、DAS暴露下でのみ酸化LDL取り込みが抑制された。次に、DASを投薬したマウスから腹腔マクロファージを分離し、リアルタイムPCR法でスカベンジャー受容体であるCD36の発現を比較した。その結果、ダサチニブを投薬した場合ではCD36の発現低下が認められた。さらに、腹腔マクロファージに直接DASを暴露したところ同様にCD36の発現低下が認められた。以上からダサチニブはマクロファージに発現するCD36の発現低下を介して酸化LDLの取り込みを障害していると推察した。またRNAシーケンスを用いてDASがコレステロール代謝に与える影響を網羅的に探索した。その結果、コレステロールの取り込みと排出の両者に重要な役割を果たすsortilinの発現が低下していた。この結果はウェスタンブロッティングでも確認された。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Pharmacological Sciences
巻: in press ページ: -
Cancers
巻: 13(20) ページ: 5116
10.3390/cancers13205116