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2019 年度 実施状況報告書

急性白血病におけるスーパーエンハンサーを介した転写因子ネットワーク異常の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K08811
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

河原 真大  滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80617449)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード白血病 / スーパーエンハンサー
研究実績の概要

造血に関わるマスター転写因子群は、ネットワークを形成して造血分化を司る。マスター転写因子の近傍に位置するエンハンサーの密集体「スーパーエンハンサー」が、他の転写因子やヒストン修飾因子により制御されることを介して、転写因子ネットワークを調節しているらしいことが最近明らかとなった。しかし、スーパーエンハンサーの制御異常が急性白血病発症の直接のトリガーとなるのかは不明である。そこで本研究は、スーパーエンハンサーの制御異常が白血病発症に寄与することを明らかにし、どのようにスーパーエンハンサーの制御異常が誘導されるのかを明らかにすることを企図して計画された。
本年は、マスター転写因子のスーパーエンハンサーの欠失が、白血病の発症や維持に関与するのかを検討した。好中球分化に必須のTFであるGFI1のSE (GFI1-SE)は、赤白血病において抑制されており、スーパーエンハンサーを抑制するヒストン就職因子LSD1の阻害剤によって活性化する。そしてこの活性化が見られる白血病においてのみ、LSD1阻害剤は顆粒球系への分化誘導と抗白血病効果を発揮することが明らかとなった。さらに、GFI1-SEを欠損した赤白血病細胞株を樹立し、LSD1阻害剤に暴露させると顆粒球系への分化誘導が著しく障害された。LSD1阻害剤による分子プログラムの変動が、GFI1-SE欠損によってどう影響を受けるかをGSEAで検討したところ、LSD1阻害剤によって障害される赤白血病やMDS関連白血病を支えるプログラムが、GFI1-SEを欠失させるとLSD1阻害剤を投与しても障害されずそのまま維持された。
以上の結果から、LSD1によるGFI1-SEの抑制が赤白血病の維持に重要であり、非コードDNA領域の異常が白血病を支える重要な分子病態の一つとなりうることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、マスター転写因子のスーパーエンハンサーの欠失が、白血病の維持に関与することを明らかにすることができた。この部分について論文(Leukemia誌)にまとめることができた。さらに、転写因子とLSD1との複合体によるスーパーエンハンサー抑制メカニズムについても検討が進んでいる。

今後の研究の推進方策

マスター転写因子のスーパーエンハンサーが、どのように制御されているのか、さらに詳細なメカニズムの解明を試みる。キメラ遺伝子の発生が、スーパーエンハンサーにどのような影響を与えるのかについての解明を試みる。さらに、LSD1阻害剤と他のどのような薬剤とコンビネーションすることでより高い抗白血病効果が得られるのかについても検討を行い、実臨床を見据えた研究の展開も模索する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] LSD1-mediated repression of GFI1 super-enhancer plays an essential role in erythroleukemia.2020

    • 著者名/発表者名
      Tatsumi G, Kawahara M*, Yamamoto R, Hishizawa M, Kito K, Suzuki T, Takaori-Kondo A, Andoh A
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 34 ページ: 746-758

    • DOI

      10.1038/s41375-019-0614-6.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Thiopurine-mediated impairment of hematopoietic stem and leukemia cells in Nudt15R138C knock-in mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Tatsumi G, Kawahara M*, Imai T, Nishishita-Asai A, Nishida A, Inatomi O, Yokoyama A, Kakuta Y, Kito K, Andoh A
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 34 ページ: 882-894

    • DOI

      10.1038/s41375-019-0583-9.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Elemental diet induces alterations of the gut microbial community in mice.2019

    • 著者名/発表者名
      Andoh A, Inoue R, Kawada Y, Morishima S, Inatomi O, Ohno M, Bamba S, Nishida A, Kawahara M, Naito Y
    • 雑誌名

      J. Clin. Biochem. Nutr.

      巻: 65 ページ: 118-124

    • DOI

      10.3164/jcbn.19-8.

    • 査読あり
  • [学会発表] Thiopurine-mediated impairment of hematopoietic stem and progenitor cells in NUDT15R138C knock-in mice and potentiality of Nudt15 genotype-based precision medicine for acute leukemia.2019

    • 著者名/発表者名
      Goichi Tatsumi, Masahiro Kawahara, Takayuki Imai, Ai Nishishita-Asai, Atushi Nishida, Osamu Inatomi, Akihiko Yokoyama, Yoichi Kakuta, Katsuyuki Kito, and Akira Andoh
    • 学会等名
      The 24th European hematology association (EHA) congress
    • 国際学会
  • [学会発表] BCL-2 expression in acute myeloid leukemia and blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm.2019

    • 著者名/発表者名
      Saika W, Tashiro H, Teramoto Y, Nagai S, Iwasa M, Asai A,Fujishiro A, Nishimura R, Kawahara M, Minamiguchi H, Moritani S, Kito K, Andoh A.
    • 学会等名
      第81回日本血液学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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