研究課題
第一にKIRアレルの新規タイピング法確立に向けて、各アレル遺伝子のプライマー設計を行った。具体的には1500検体に及ぶ日本人検体の全ゲノムシークエンス結果に基づいた解析を行い、BLASTデータに基づいた検証も並行して行った。第二に本邦で造血幹細胞移植を受けた成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia: ATL)の保存検体を用いた臨床研究に関して、本学および造血細胞移植データセンターで2019年12月に倫理承認を得た。日本骨髄移植推進財団と日本造血細胞移植学会は、本邦で実施された非血縁者間同種骨髄移植のドナーおよびレシピエントのDNAを収集し、日本赤十字社で保管している。また各移植の臨床情報とHLAデータは日本造血細胞移植データセンターに保存され、連結可能匿名化されている。DNAの収集は文書による同意を得て行われ、それらを用いた後方視的遺伝子解析研究は日本造血細胞移植学会で倫理審査を受け、承認されている。第三にHLA欠失細胞株および特定のHLAを遺伝子導入した細胞株を用いてKIRの機能解析実験を進めた。ヒトリンパ球と腫瘍細胞(K562)の共培養系においてフローサイトメトリーでNK細胞活性、すなわちCD107aの脱顆粒やIFN-gammaの産生を検出する実験系は確立済みで、本実験系でNK細胞活性がNK細胞のKIRアレルと腫瘍細胞のHLAアレルの組み合わせと相関するか、解析した。HLA欠失細胞株や特定のHLAを遺伝子導入・ノックダウンした株、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性を持つ株を用いて、多角的解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
KIRアレルのタイピング法の確立に向けてはプライマー設計の段階に入っており、2020年度中には精度検証を含めて完成する見込みである。ATLのレジストリ保存検体を用いた臨床研究は既に倫理承認を得ており、現在は検体委譲の詳細な手続きを進めている。KIRアレルの機能解析実験は予定より早く進行し、アレル依存性のNK細胞活性調節を確信するに至っている。
KIRアレルタイピング法の確立に向けて、プライマー設計と並行してアレルの判定アルゴリズムの開発も行う。本法により、タイピングの曖昧さ(ambiguity)が解消されるはずである。タイピング法が完成次第、本邦のATL保存検体を用いた臨床研究を行い、移植予後と相関するKIRアレルとHLAの組み合わせを抽出する。本結果は移植免疫におけるKIRアレルの臨床的意義を明らかにするもので、将来的には前向き検証を経て移植医療のガイドライン反映を目指す。KIRアレルの機能解析結果に基づき、特定のKIRアレルを標的とした創薬による免疫調節の可能性を検証する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (3件) (うち外国 1件)
Br J Clin Pharmacol
巻: - ページ: -
Int J Hematol
巻: 111 ページ: 733-738
10.1007/s12185-019-02809-5
Intern Med
巻: 59 ページ: 1035-1040
10.2169/internalmedicine.4072-19
Blood Adv
巻: 4 ページ: 667-671
10.1182/bloodadvances.2019000343
Ann Hematol
巻: 99 ページ: 113-119
10.1007/s00277-019-03844-2
Leuk Res
巻: 88 ページ: 196273
10.1016/j.leukres.2019.106273
Am J Respir Cell Mol Biol
巻: 61 ページ: 355-366
10.1165/rcmb.2018-0188OC
巻: 109 ページ: 221-227
10.1007/s12185-018-2552-x
巻: 98 ページ: 465-471
10.1007/s00277-018-3502-7
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~hemonc/research/transplantation.html