研究課題/領域番号 |
19K08813
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柏木 浩和 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10432535)
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研究分担者 |
加藤 恒 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20705214)
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 特任教授(常勤) (80252667) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インテグリン |
研究実績の概要 |
本年度も、我々が作製したαIIbβ3を恒常的に活性化する細胞内変異αIIb(R995W)ノックイン(KI)マウスに関する検討を中心に行った。 KIマウスにおいては、血小板減少をきたすが、骨髄および脾臓における巨核球に関しては、数およびその形態においてKIマウスにおいて明らかな異常は認めなかった。一方、血小板産生の最終段階であるproplatelet形成においては、KIマウスにおいて低下が認められた。抗血小板抗体により誘発した血小板減少状態からの血小板数回復や、トロンボポエチン投与後の血小板増加において、KIマウスでは障害が認められることから、KIマウスにおける血小板減少の一因はproplatelet形成障害を主とする血小板産生障害によると考えられた。また血小板消費に関しては、ビオチン投与による血小板寿命測定においてKIマウスでは軽度の低下を認められ、血小板減少に関与する可能性が考えられる。 さらに、我々は新たな家族性血小板減少症例の解析から、新規のβ3遺伝子異常が血小板減少に関与している可能性を示した。従来のαIIbβ3関連血小板減少症に認められるαIIbβ3異常はすべてαIIbβ3の恒常的活性化を誘導するものであったが、本β3遺伝子異常ではαIIbβ3の明らかな活性化を誘導しなかった。一方で、αIIbβ3のみならずGPVI発現の低下も認められ、何らかのシグナル異常が生じている可能性が示唆された(芥田ら、第81回日本血液学会学術集会)。そこで、本遺伝子異常を有するKIマウスを作成に着手した。CRISPR/CAS9システムを用いてβ3変異を導入し、現在、F1マウスを得ることに成功している。今後、本マウスを用いて検討を進めていく予定である。 インテグリンシグナルに関しては、CalDAG-GEFI欠損とKinlin-3欠損例の血小板を用いた検討によりそれぞれの分子のαIIbβ3活性化に対する役割の違いが明確になりつつある。今後更にその分子メカニズムについて検討を続けることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KIマウスを用いた血小板減少症のメカニズムの解析に関して、その機序を明らかにすることができた。また我々は新たなインテグリン異常による血小板減少例を見出しており、そのKIマウス作成のも着手している。これらのマウスを用いて血管病変との関連を検討できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は新たなβ3変異を導入したKIマウスの検討を中心に研究を行うことを予定している。具体的には、血小板減少のメカニズム、血小板膜蛋白発現に対する影響およびそのメカニズムを血小板および巨核球において検討することを予定している。また変異αIIbβ3発現細胞や患者末梢血由来巨核球を用いて、αIIbβ3のリガンドであるフィブリノゲンに接着させた場合の形態異常、細胞骨格系に関する検討を加える。またαIIb(R995W)ノックイン(KI)マウスにおいては、αIIbβ3発現低下のメカニズムについて更に詳細な検討を行うことを予定している。さらに、今後は新たな変異KIマウスとともに、血管病変に関する検討を加えることを予定している。 インテグリン活性化機構に関しては、CalDAG-GEFI欠損とKinlin-3欠損のinside-outにおける影響について更なる検討(流動条件下での接着能の違い)などに関する更なる検討を加えることを予定している。Kindlin-3欠損例はCalDAG-GEFI欠損と比べより強い出血傾向が認められるが、これはKindlin-3がαIIbβ3だけでなく血小板のその他のインテグリンの活性化にも関与していることが関連している可能性が示唆される。この点を中心に検討を進めることを予定している。
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