αIIbβ3を恒常的に活性化する細胞内変異αIIb(R995W)ノックイン(KI)マウスを用いて、KIマウスに認められる血小板減少のメカニズムとして、骨髄および脾臓における巨核球数およびその形態には異常を認めないこと、一方、血小板産生の最終段階であるproplatelet形成においては、KIマウスにおいて低下が認められることを明らかにした。また抗血小板抗体により誘発した血小板減少状態からの血小板数回復や、トロンボポエチン投与後の血小板増加において、KIマウスでは障害が認められることから、KIマウスにおける血小板減少の一因はproplatelet形成障害を主とする血小板産生障害によると考えられた。 さらに、我々は新たな家族性血小板減少症例の解析から、新規のβ3遺伝子異常が血小板減少に関与している可能性を示した。従来のαIIbβ3関連血小板減少症に認められるαIIbβ3異常はすべてαIIbβ3の恒常的活性化を誘導するものであったが、本β3遺伝子異常ではαIIbβ3の明らかな活性化を誘導しなかった。一方で、αIIbβ3のみならずGPVI発現の低下も認められ、何らかのシグナル異常が生じている可能性が示唆された(芥田ら、第81回日本血液学会学術集会)。そこで。CRISPR/CAS9システムを用いて本遺伝子異常を有する新たなマウスの作成を行い、変異KIマウスを得ることに成功した。このマウスにおいてもヒトと同様の血小板減少が認められた。またαIIbβ3およびGPVIの発現低下を認めており、新たなメカニズムによる血小板減少症の存在が明らかとなった。 インテグリンシグナルに関しては、CalDAG-GEFI欠損とKinlin-3欠損例の血小板を用いた検討によりそれぞれの分子のαIIbβ3活性化に対する役割の違いが明確になりつつある。今後更にその分子メカニズムについて検討を続けることを予定している。
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