研究課題/領域番号 |
19K08814
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
一井 倫子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30633010)
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研究分担者 |
西東 秀晃 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50815496)
柴山 浩彦 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (60346202)
戸田 淳 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90770834)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 多発性骨髄腫 / 骨髄微小環境 |
研究実績の概要 |
骨髄造血を維持する機構として、造血微小環境(niche;ニッチ)の重要性が知られている。近年の研究で、間葉系細胞が多発性骨髄腫の進展に関わっている事が報告されているが、その研究はマウス実験や培養実験から得られており、臨床的意義は未だ不明である。本研究では、フローサイトメトリー法を用いて骨髄腫患者骨髄検体から直接に単離した間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells; MSC)の解析から得られた結果を基に、骨髄腫におけるニッチ細胞の役割を明らかにすることを目的としている。 MSCの単離は、全骨髄細胞を培養し数日後に付着細胞を回収して得る方法が主流である。本年度はまず、健常者骨髄から、フローサイトメトリー法により直接に単離した非血液細胞のフェノタイプの解析を行った。その結果、マウスモデルで造血支持細胞として報告されているCXCL12陽性細網細胞(CXCL12-abundant reticular cells; CAR細胞)に非常に類似した細胞がMSCの大半を占めている事が分かった。コラゲナーゼ処理を行った骨髄細胞から、CD45陰性CD71陰性グリコフォリンA陰性、CD31陰性の血液細胞と血管内皮細胞分画を除いた細胞集団を解析すると、CD271陽性PDGFRb陽性の一集団が同定される。本集団はCFU-Fコロニー形成能を有し、かつCXCL12、SCFなどの造血幹細胞を維持する鍵とされる因子のRNAが高発現していた。培養系で単離した場合には、CXCL12などのRNA発現は著減しており、本検討により、直接単離により得られたMSCを用いた検討が、従来の付着法に比べ、より生体内に近い状態の細胞を検討することを可能に出来ることが裏付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、直接単離したMM患者骨髄由来のMSCを解析する事で、①MM患者においてニッチ細胞がどのように変化しているか ②MMニッチ細胞の変化と病態・予後との関連性:バイオマーカーとしての有用性 について明らかにすることを第一の目的とし、さらに、単離した患者骨髄腫MSCを用いた遺伝子解析を基に機能解析を行い、③骨髄腫ニッチ細胞の治療標的としての可能性についての検討を行う事を最終目的としている。 本年度においては、まず比較検討する上で必須となる健常者のMSCについての検討を中心に行った。併せて、骨髄腫患者検体収集を続けており、次年度からは骨髄腫患者検体を用いた研究に進むことが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、直接単離したMM患者骨髄由来のMSCを解析する事で、MSCの多発性骨髄腫の病態に与える作用、予後への影響とバイオマーカーとしての有用性、治療標的の有用性 について明らかにしていく事を目的としている。本年度に蓄積した骨髄腫患者骨髄検体を用いて、次年度からは患者検体での検討に進む。 骨髄腫診療は日進月歩に進歩しており、患者の実際の生存期間や治療反応性との相関を評価するには、従来のアルブミン・ベータミクログロブリン値を用いた国際病期分類(ISS)、FISH法等により同定された染色体異常、CRAB症状の有無と重症度といった予後因子を用いた相関解析は骨髄腫治療の現状にフィットしないのではないかと考えている。長期的な研究期間が本研究の目的の一つであるバイオマーカーとしての有用性の検討については、骨髄腫細胞のNGS解析との関連性を評価する計画への変更を検討中である。
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