研究課題
骨髄造血を維持する機構として、造血微小環境(niche;ニッチ)の重要性が知られている。近年の研究で、間葉系細胞が多発性骨髄腫の進展に関わっている事が報告されているが、その研究はマウス実験や培養実験から得られており、臨床的意義は未だ不明である。本研究では、フローサイトメトリー法を用いて骨髄腫患者骨髄検体から直接に単離した間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells; MSC)の解析から得られた結果を基に、骨髄腫におけるニッチ細胞の役割を明らかにすることを目的としている。本研究初年度には、健常者骨髄から、フローサイトメトリー法により直接に単離した非血液細胞のフェノタイプの解析し、マウスモデルで造血支持細胞として報告されているCXCL12陽性細網細胞(CXCL12-abundant reticular cells; CAR細胞)に類似した細胞が、コラゲナーゼ処理を行った骨髄細胞から、CD45陰性CD71陰性グリコフォリンA陰性、CD31陰性の血液細胞と血管内皮細胞分画を除いた細胞集団の中でCD271陽性PDGFRb陽性の一集団として同定される事を確認した。本年度は、同じ細胞表面抗原発現パターンを有する細胞分画を、多発性骨髄腫患者骨髄より単離してRNAseq解析を行った。健常者骨髄由来の細胞と比較すると、その分化傾向や発現シグナルが有意に異なる事が確認した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、直接単離したMM患者骨髄由来のMSCを解析する事で、①MM患者においてニッチ細胞がどのように変化しているか ②MMニッチ細胞の変化と病態・予後との関連性:バイオマーカーとしての有用性 について明らかにすることを第一の目的とし、さらに、単離した患者骨髄腫MSCを用いた遺伝子解析を基に機能解析を行い、③骨髄腫ニッチ細胞の治療標的としての可能性についての検討を行う事を最終目的としている。初年度に比較検討する上で必須となる健常者のMSCについての検討を中心に行った上で、本年度は骨髄腫患者検体を用いた研究に進むことが出来た。
本研究では、直接単離したMM患者骨髄由来のMSCを解析する事で、MSCの多発性骨髄腫の病態に与える作用、予後への影響とバイオマーカーとしての有用性、治療標的の有用性 について明らかにしていく事を目的としている。本年度に行った骨髄腫患者骨髄検体を用いたRNAseq解析の結果を基に、次年度からは患者情報と検体データとの関連についての検討に進む。骨髄腫患者検体由来のMSCから得られたデータでは、尾錠環境のメカニズム解析には不十分である事が判明したため、来年度からは腫瘍細胞を用いた検討も併せて行う計画に修正した。
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