研究課題
本研究計画の目標は、ヘテロな集団であるDLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)において、リンパ腫細胞の遺伝子変異と周囲環境の遺伝子発現変化を同時に評価し、より有用性の高い予後層別化システムを構築することである。さらに、DLBCLの遺伝子変異が、どのような免疫機構を介し、DLBCLの悪性度と相関する特徴的な微小環境を形成するのか、そのメカニズムを明らかにする。初発DLBCL170症例のFFPE検体を用いた先行研究のnCounter system (NCS) 解析で、follicular helper T細胞(Tfh)関連遺伝子ICOS、マクロファージ関連遺伝子CD11c、ストローマ細胞関連遺伝子FGFR1が強力な予後因子として抽出された。これらの微小周囲環境因子を細胞種別に分類して、DMS (DLBCL Microenvironment Signature)スコアを作成、これら3因子の発現レベルでスコア化した。さらに、別コホートの初発DLBCL80例でバリデーションを行ったところ、先行研究と同様に、DLBCLの予後予測モデルとしてDMSスコアが有用であることが示された。同時に遺伝子変異解析をすすめた。DMSスコアが低い患者群では、B細胞受容体経路活性化を及ぼすCD79B・CARD11・MYD88分子などの予後不良な遺伝子変異を高い頻度で伴っていた(Blood Adv. 2022; 6: 2388-2402)。また、P53変異は強力な予後不良因子であったが、これらの症例ではT細胞関連の遺伝子発現が低下、T細胞が機能不全に陥っていることが明らかになった。
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