研究課題
本研究では、原発性骨髄線維症のドライバー変異であるcalreticulin(CALR)の変異を研究対象として、「CALR変異造血幹細胞(hematopietic stem cells:HSCs)のクローン拡大機序」、「CALR変異蛋白による増殖シグナル活性化機序」を解明する。世界初の血球細胞特異的Calrノックアウトを作出し、造血におけるCalrの役割について明らかにした。更に、CALR変異HSCsのクローン拡大機序に関して、同ノックアウトマウスの解析結果から、Calr遺伝子のヘテロ欠損がHSCsの競合再構築能を亢進させること、そしてCalrヘテロ欠損がCALR変異を有するHSCsのクローン拡大能を強化することを示し論文を発表した(Blood 2020)。現在、この知見を骨髄増殖性腫瘍の新規治療法の開発に結び付けていくために、CALRヘテロ欠損の臨床的意義について、マウスモデルを用いて、エピゲノム制御分子の遺伝子変異(以下エピゲノム変異)との協調作用の有無や、IFNαなどの治療薬への反応性への影響の解析を進めている。CALR変異蛋白による増殖シグナル活性化機序に関しては、、CALR変異体タンパクについて様々なdeletion mutantを作成した。更に作成した変異体それぞれについて、STAT5レポーターアッセイによるin vitro増殖シグナル活性化能、レトロウイルスを用いた骨髄移植マウスモデルによるin vivo造腫瘍能、について評価を行った。その結果、変異アミノ酸配列の中から、in vitro増殖シグナル活性化に必要な部分、in vivo造腫瘍能に必要な部分を見出すことができた。これらの部分を標的化する研究を前年度に引き続き進めている。
2: おおむね順調に進展している
CALR変異造血幹細胞(hematopietic stem cells:HSCs)のクローン拡大機序に関して、マウスモデルを用いてCalr遺伝子のヘテロ欠損がHSCsの競合再構築能を亢進させること、そしてCalrヘテロ欠損がCALR変異をHSCsのクローン拡大能を強化することを示すことができた。そこからの発展研究も順調に進展している。CALR変異蛋白による増殖シグナル活性化機序に関しても、計画に沿い実験が進んでいる。
CALR変異造血幹細胞(hematopietic stem cells:HSCs)のクローン拡大機序に関しては、初年度の結果を踏まえ、HSCs分画のRNAseq解析の結果や、現在行っているCALRヘテロ欠損の臨床的意義の解析実験の結果を踏まえ、HSCsクローン拡大に寄与するpathwayの治療標的化を目的とした実験へと進んでいく。CALR変異蛋白による増殖シグナル活性化機序に関しては、変異タンパクについて、in vitroの増殖シグナル活性化能の維持に必要な部分と、in vivo造腫瘍能の維持に必要な部分は一致していないことがわかった。引き続き、初年度に同定したin vivo造腫瘍能に必須な部分について、その機能の解明や、機能抑制についての検討を進めていく。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Blood
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Leukemia
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