研究実績の概要 |
骨髄不全症候群の造血障害におけるNKG2D介在性免疫の役割を骨髄異形成症候群患者臨床検体と骨髄不全を示すLIG4変異マウスを用いて検討している。 1、骨髄異形成症候群患者臨床検体を使った検討:我々は骨髄不全症候群 (BFS) における特発性造血障害発生にNKG2D (Natural-killer group2 member D) 免疫が関与することを提案している. これまでにULBPs やMICA/BなどのNKG2D ligand (NKG2DL)はBFS患者血球膜上によく発現しており, このNKG2DL発現細胞はNKG2D陽性リンパ球により免疫攻撃を受け排除されることを報告した. さらに, BFS患者において, 血清中の可溶性NKG2DL(sNKG2DL)値が血球減少と関連していることを報告した。今回, 骨髄異形成症候群(MDS)患者血清sNKG2DL値を調べ, MDSにおけるsNKG2DLの意義を検討した。【方法】MDS患者65名と健常者10名の血清sNKG2DLs (sULBP-1,3, sMICA/B) 値、MDS患者10名の骨髄sULBP-1値をELISAにて測定し, MDSにおける造血障害への関与を検討した.【結果】健常者と比較し, MDS患者では血清sNKG2DL (sULBP-1,3, sMICA/B) の発現量は有意に低値であった(P<0.01). また, MDS患者10名の骨髄sULBP-1の発現量は血清sULBP-1と比較し, 有意に高値であった (P<0.01). 芽球増加を伴うexcess blasts group (EB-1, 2) とその他の群でsNKG2DLsの発現量に差は認めなかった. 2、LIG4変異マウスを使った検討:Lig4変異マウス(LigW447C/W447C)は骨髄細胞数の低下、末梢血白血球減少が見られた。既報のごとくBリンパ球、Tリンパ球の分化障害がみられた。骨髄細胞を多染色フローサイトメトリー法でみてみると最も未分化な幹細胞は維持されているもののその後の分化が障害されていることがわかった。また、この変異マウスは炎症性腸炎を呈して早期に死亡することがわかった。
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