研究課題/領域番号 |
19K08825
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
花村 一朗 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70440740)
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研究分担者 |
太田 明伸 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30438048)
シバスンダラン カルナン 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30557096)
鈴木 進 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70518422)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | FLT3 / ゲノム編集 / CD52 / アレンツムマブ |
研究実績の概要 |
FLT3遺伝子のinternal tandem duplication (ITD) 変異は、急性骨髄性白血病 (AML)患者 の約20%に認められ、FLT3-ITD陽性患者の多くは従来化学療法に不応である。近年開発されたFLT3シグナル阻害剤は、FLT3-ITD陽性患者の予後を改善したが、治療効果は限られている。本研究の目的は、FLT3-ITD白血病患者の予後改善を目指し、FLT3阻害剤以外の新規治療法を探索・同定することである。 最初に、CRISPR-Cas9ゲノム編集法を用いて、ヒト骨髄性白血病細胞株K562細胞の野生型FLT3 (FLT3-wild type, FLT3-WT) をFLT3-ITDに改変し、FLT3-ITD改変K562 (K562-ITD)株を樹立した。 次に、cDNAマイクロアレイを用いて、K562-ITD株とK562-FLT3-WT株とで網羅的な遺伝子発現解析を行った。K562-ITD株で有意に発現亢進していた7個の遺伝子のうち、CD52に着目した。FLT3-WTからFLT3-ITDへの改変による、CD52の発現亢進は、RT-PCR法、フローサイトメトリー法によっても確認された。またAML患者のデータベース解析においても、CD52発現はFLT3-ITD患者で高い傾向であった。さらに抗CD52抗体であるアレンツムマブは、K562-ITD株で有意に高度の抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity, ADCC)を誘発し、マウス皮下に移植したK562-ITD細胞の腫瘍増殖を著明に抑制した。 以上より、アレムツズマブが、FLT3-ITD白血病に対する有効な治療選択肢となる可能性が示唆された。現在、cDNAマイクロアレイから得られた他の候補分子についても、治療標的としての可能性を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、抗CD52抗体であるアレムツズマブが、FLT3-ITD白血病に対する新規の治療選択肢となりうる細胞実験データが得られたため。
Karnan S, Hanamura I, et al. CD52 is a novel target for the treatment of FLT3-ITD-mutated myeloid leukemia. Cell Death Discov. 2021, in press
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今後の研究の推進方策 |
FLT3-ITD変異は、急性リンパ性白血病(acute lymphoid leukemia, ALL)などの他の血液がんでも低頻度に認められ、予後不良因子である可能性が示唆されている。したがって、ヒトALL株でFLT3-ITD改変体を作成し、ITD改変株でのCD52発現レベルの変化やアレンツムマブの効果を検討する。またK562-ITD株とK562-FLT3-WT株とで行ったcDNAマイクロアレイ比較解析から得られた他の候補分子についても、治療標的としての可能性を解析する。さらに、K562-ITD株とK562-FLT3-WT株の培養上清中のmiRNAを網羅的に発現解析し、FLT3-ITD変異の診断マーカーや予後不良白血病の新規バイオマーカーを探索する。
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