研究課題/領域番号 |
19K08826
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
芦原 英司 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70275197)
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研究分担者 |
戸田 侑紀 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40779724)
河嶋 秀和 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (70359438)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / エクソソーム / CD63 / 核酸医薬 / 抗体薬物複合体 |
研究実績の概要 |
【目的】本申請研究は、研究代表者が発見したエクソソーム(Exo)の細胞指向性送達理論に基づき、Exoの表面抗原に対する抗体とsiRNAを結合させた新規の機能分子開発研究である。Exoの表面抗原CD63に対する抗体とsiRNAを結合させた抗体薬物複合体を用いて分泌されたExoを捕捉し、多発性骨髄腫 (MM) 細胞内に選択的にsiRNAを送達する“Exo捕捉型核酸医薬品”の開発を行う。 【実施計画】In vitro系の検討では、まず抗体とsiRNAとのリンカーにオリゴアルギニンペプチド Arg-9rを用い、CD63抗体とsiRNAを結合させたExo捕捉抗体結合型siRNA(Exo捕捉型siRNA)を合成する。次に合成したExo捕捉型siRNAの細胞内取り込みを検証する。各種ヒトMM細胞株に上記の方法で作製した蛍光標識Exo捕捉型siRNAの導入を検証する。引き続き、今までに研究代表者がMMに対する抗腫瘍効果を確認しているBRD4、Myc、β-catenin等を標的としたsiRNAを用いてExo捕捉型siRNAを作製し、in vitro系での増殖抑制効果、細胞死誘導および下流分子の発現や機能変化を検証する。In vivo系の検討では、まずRI標識したExo捕捉型siRNAを用いて、マウス投与後の体内動態を検討する。次にMM担がんモデルマウスを用いて抗腫瘍効果を検討する。 【意義】今回開発する新規の抗体結合型siRNAが多発性骨髄腫治療に有効であることが示されれば、この“Exo捕捉型核酸医薬品”を用いて、多発性骨髄腫に対する新たな治療法の確立を目指す。この技術は広く各種造血器悪性腫瘍患者さん、さらには固形腫瘍患者さんへの治療にも展開できる。また分子標的小分子化合物のconjugate作製にも展開でき、本研究の技術はMM患者さんをはじめ、多くのがん患者さんに福音をもたらす可能性を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.抗体-Argペプチド:siRNA(mAb-Arg:siRNA)複合体合成の確認 作製したmAb-Arg複合体とluciferase (Luc) siRNAを15分間反応させ、ゲルシフトアッセイによりmAb-Arg:siRNA複合体の合成を確認した。直鎖Argを用いた際には、mAb:siRNA比が5:1で合成され、分岐鎖ArgではmAb:siRNA比が1:1から2.5:1で合成が確認された。 2.Argペプチド鎖の違いによる細胞内送達の比較と標的遺伝子抑制効果の検証 まず直鎖型と分岐鎖型のArgペプチドによるFITC標識siRNAのOPM-2細胞内送達を、共焦点顕微鏡を用いて比較した。分岐鎖Argを用いたmAb-Arg複合体の方が多くのsiRNAを送達することが明らかとなった。 次にMYC (c-myc) およびCTNNB1 (β-catenin) に対するsiRNAを用いて、分岐型Argを用いたmAb-Arg:siRNA複合体によるそれぞれの標的分子mRNA発現変化を、real-time RT-PCR法を用いて検討した。mAb-ArgとsiRNA比を1:1としsiRNAを投与したところ、MYCおよびCTNNB1 mRNAはそれぞれ52.5%、55.3%に抑制された。以上のことから、本抗体薬物複合体が有効な薬物送達能力があり、かつ薬物としても有効であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro系の検討においては、基礎となる効果は確認できたので、さらに複数のMM細胞株で遺伝子抑制効果を検証するとともに、細胞死誘導を検討する。またMM細胞へのエクソソーム取り込みを阻害することで抑制効果が減弱することを検証する。 In vivo系の検討においては、RI標識のsiRNAを合成後、抗体との複合体を合成する。合成したRI標識抗体薬物複合体を担がんマウスに投与し、生体内分布、腫瘍内集積を検討する。
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