研究課題
本研究は、造血発生や維持において必須であるZFATによる造血幹細胞の活性制御における分子機構を解明するとともに、ZFATシステムと造血幹細胞の活性支持の中核因子であるGemininシステムとのクロストークを解明することにより、生体外での造血幹細胞の増幅・維持の技術開発へ向けた分子基盤の確立を目指すものである。ZFATは、自己免疫性甲状腺疾患感受性遺伝子として同定された転写関連因子であり、T細胞のホメオスターシス維持や造血発生における赤芽球分化において必須である。ZFATは造血幹細胞にも発現を認めるが、造血幹細胞の増殖と分化の双面における活性制御における役割は未だ明らかではない。一方で申請者は、DNA複製ライセンス化制御による細胞増殖制御因子であり、かつクロマチンリモデリングによる幹細胞未分化性維持因子であるGemininのポリコーム複合体1やHoxタンパク質によるユビキチン化を介したタンパク質代謝が、造血幹細胞の活性を支持していることを明らかにしてきた。研究初年度は、静止期にある造血幹細胞にも目的遺伝子を導入でき、サイレンシングが起こりにくいSBI社のレンチウイルスベクター系を用いて、ZFAT強制発現系やDOX誘導型ZFATノックダウン系を作成した。また、膜透過型配列融合型ZFATリコンビナントタンパク質導入系を作成した。研究2年目は、ZFATとGemininのクロストークが、直接の結合によるものではないことがわかってきたため、アダプタータンパク質の同定のため、yeast-two-hybrid法にてZFATの結合タンパク質を探索した。既にGemininとの結合が報告されているタンパク質のほか、翻訳関連タンパク質などが同定されてきている。研究3年目は、同定されたアダプタータンパク質の分子生物学的解析を進めた。また本学でのマウス実験系の立ち上げに精力を注いだ。
3: やや遅れている
研究初年度の途中、令和元年10月1日より、共同研究者の大野芳典が広島大学から本学(福岡大学)へ異動となり、遺伝子改変マウスの一部を福岡大学に移管しようとしたが、寄生虫汚染が発覚したため、受精卵より遺伝子改変マウスを起こさなければならなくなった。また、研究2、3年目は、繰り返す新型コロナウイルス感染拡大のため広島大学と本学との行き来が制限されたため、マウスを使用した研究は思うように進んでいない。
遅れているマウスを使用した実験を年度内に強力に推進する。具体的には、DOX(ドキシサイクリン)非存在下で造血幹細胞特異的にCreを発現するマウス(tetOCre-Tal1tTAマウス)とZfatflox/floxマウスを掛け合わせ、Zfatflox/flox- tetOCre-Tal1tTAマウスを作成する。このマウスをDOXを投与した状態で飼育し、その後にDOX投与をやめることで造血幹細胞特異的にZfat遺伝子を欠損させる。同時に、Gemininとの相互作用のアダプタータンパク質となるZFAT結合タンパク質の解析を中心に分子生物学的解析を進める。
研究初年度の途中、令和元年10月1日より、共同研究者の大野芳典が広島大学から本学(福岡大学)へ異動となり、遺伝子改変マウスの一部を福岡大学に移管しようとしたが、寄生虫汚染が発覚したため、受精卵より遺伝子改変マウスを起こさなければならなくなった。また、研究2、3年目は、繰り返す新型コロナウイルス感染拡大のため広島大学と本学との行き来が制限されたため、マウスを使用した研究は思うように進んでいない。マウス実験は本学でほとんどを行うこととし、研究3年目は実験系やデータの移管に努めた。研究期間を一年延長し、遅れているマウスを使用した実験を遂行する。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Placenta
巻: 114 ページ: 68-75
10.1016/j.placenta.2021.08.059
http://www.med.fukuoka-u.ac.jp/biochem1/index.html