研究課題/領域番号 |
19K08832
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長尾 俊景 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (10622798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 難治性B細胞腫瘍 / COT / 臨床的バイオマーカー |
研究実績の概要 |
当該年度の研究内容に関する当初の目標としては、初年度に引き続き難治性B細胞腫瘍におけるCOTの発現と機能に関する包括的な解析の継続を挙げていた。これについては一定の成果を得られたものと考える。 実績:当初の計画に加えて、昨年度の実施報告で記載した新規樹立ABC-DLBCL細胞株TMD12を加えて解析を進めた。細胞株TMD8、TMD12と対照である細胞株BJAB各々に、COTのC末端(最終exon)をtruncateした活性化体およびmutagenesis法により変異導入したドミナントネガティブ体を、レトロウイルス法で導入した細胞株を順次を作成中である。また昨年度の成果からCOTのシグナル伝達にJak/STAT3経路との相互作用が重要であることが示唆されていたが、免疫沈降法による解析にて、大変興味深いことに従来知られたCOT/p105/ABIN2複合体とSTAT3が直接関連し、腫瘍原性に関与している可能性が示唆された。この複合体形成について、COTの機能やキナーゼ活性に関与するリン酸化部位への変異導入や、ABC-DLBCLの重要な特徴である変異型MYD88および変異型CD79Bとの関連を探るため、293T細胞をプラットフォームとして、これらの分子をTag付きで導入した系の作成も進行中である。その他重要な成果として、IL-6およびIL-10産生性の細胞株であるTMD8を用いたqPCR解析で、特異的COT阻害薬処理によりIL-6およびIL-10のmRNA産生が負に調節され、結果としてSTAT3、MYCの抑制、また細胞周期進行を抑制するp27の発現が増強することで細胞の増殖が阻害されることが示唆された。これらの結果について日本血液学会総会にて発表した。またTMD12を用いた解析部分を含めて細胞株の樹立論文の投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の同時期の状況よりは軽減されているものの、COVID-19による全学的な研究活動の制限の影響が残っていることに加え、研究代表者自身の所属施設でのCOVID-19診療への臨床医として参加dutyもあり、実験動物センターでの研究活動や他施設との連携(臨床検体の授受等)については当初の計画の変更、一部縮小が必要となる可能性が高い。一方で、in vitroでの解析手法の多様化を進め、オープンアクセスの大規模データベースの活用など研究全体の質を落とさない形での方向性の修正を計画しており、昨年度と比較して遅れによる影響は縮小しつつあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に計画していた内容のうち、免疫不全マウスを用いた異種移植モデルによる、特異的COT阻害薬の抗腫瘍効果を検証する部分は、上記の理由のため縮小もしくは中止せざるを得ない可能性がある。一方で当施設病理部との共同研究の形で、当該リンパ腫患者の病理組織診断時、および再発・治療抵抗性形成時のパラフィン固定標本を用いたTPL2蛋白発現の解析の規模を大きくするとともに、当施設の関連施設での同様の症例についての標本を収集し解析に追加する予定である。その他、アクセス可能な海外からの大規模なプロテオームおよびエクソーム、RNAseq解析のデータを使用した、TPL2発現と臨床的転機・予後との関連についての解析の追加など、研究全体の質を落とさない形での方向性の修正を計画している。これらによりCOT(TPL2)の難治性B細胞腫瘍、特にABC-DLBCL診療におけるバイオマーカーとしての意義・有用性について検討する。この成果について国内外の代表的な学会で発表し、論文化する。
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