当該年度の目標は継続中の基礎的解析の総括と、COTの臨床的バイオマーカーとしての可能性の検証であり、概ねこれを達成した。 実績:COTの活性化を伴う新規細胞株TMD12を含むB細胞リンパ腫株細胞、及びリンパ腫検体を用い、COTのリンパ腫原性への関与について解析を進めた。COT/p105経路が古典的NF-κB経路の活性化の制御に関与し、ibrutinib等の病態特異的小分子阻害薬に対する薬剤耐性形成へ寄与している可能性について示した。さらに、COTが多様なリンパ腫に発現する一方、COT阻害薬がABCタイプ特異的に細胞増殖を抑制し、下流のMAPK経路のみならず、IKKやSTAT3の活性化を濃度・時間依存性に抑制すること、またその機序としてはc-MYCやCyclinE、CDK2、p27等の発現制御による細胞周期進行の調節が含まれることを示し、現在Experimental Hematology誌に投稿中である。 一方COTは、IL-6/IL-10を介したautocrine機序によりJAK/STAT3経路の活性化を促すことが示唆され、DLBCLの大規模RNAseqデータ(NIH公開)を利用した解析においてもこれに矛盾しない結果を得た。さらに293T細胞を用いた検討でCOTはMYD88変異体の発現依存性にSTAT3及びNF-κB経路の活性化を誘導することを示し、ABC-DLBCLの病態形成への潜在的な関与について示した。加えて、当施設のDLBCL約40症例の病理組織標本におけるCOTの発現強度と、STAT3やNF-κB関連分子の発現との相関や、症例の臨床的特徴や予後との関連について詳細な解析を進め、COTのABC-DLBCLにおける臨床的バイオマーカー(新規予後不良因子)としての有用性について示した。以上の結果について米国血液学会での発表、および論文投稿の準備中である。
|