研究課題
我々は、肺発生において血小板活性化受容体CLEC-2とそのリガンドPdpnの相互作用がalveolar duct myofibroblastの分化を通じて正常な肺呼吸に寄与していることを明らかにしたが、出生後成長に伴って当該細胞は消失してしまう。我々は、成体において不適切なCLEC-2/Pdpnシグナルの活性化が肺線維化の原因となるmyofibroblastを生みだし、線維化を増悪させるではないかと考えた。そこで、ブレオマイシンによる特発性肺線維症のモデルマウスにおいて抗CLEC-2抗体によって血小板CLEC-2を消失させたところ、体重減少と死亡率の改善およびコラーゲン量の減少が認められた。しかしながら、この実験系に問題があり、それを回避して再度解析したところ肺線維化軽減効果は低下して有意な差が得られなかった。つまり、抗CLEC-2抗体による肺線維化軽減効果は、血小板CLEC-2欠損+血小板減少に起因する可能性が示唆された(昨年度まで)。今年度は血小板自体の重要性についての解析に切り替え計画を進めた。血小板上の受容体発現を変化させることなく、血小板数のみを減少させることが可能な抗GPIb抗体を肺線維化モデルマウスに投与して効果を検証した。しかしながら、肺線維化軽減効果は確認できなかった。おそらく継続的な著しい血小板減少は出血を誘発してしまい、別の増悪因子となってしまう可能性が示唆された。出血起こさない程度に血小板数を低いレベル(正常のおよそ25%)で維持することを抗GPIb抗体の用量を変えることで実現可能か調査したが、頻回の血小板数計測による血液喪失や個体差による血小板数の変化の度合いの違いなどから極めて困難であった。その他、血小板減少を誘導可能とされる薬剤の投与も試したが、投与経路や溶解の条件の確立に苦慮し血小板減少を確認できなかったため肺線維化モデルマウスに対する実験は実施できなかった。
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