研究実績の概要 |
移植片対宿主病(GVHD)は造血細胞移植後の予後を左右する重要な合併症である。 GVHDは主に皮膚、腸、肝臓に病変がみられます。近年マクロファージは2つに分けられることが分かっています。1つはM1マクロファージで炎症誘発性または免疫反応性のもので、もう1つはM2マクロファージで抗炎症または免疫抑制の作用を持っています。 我々はM2マクロファージを用いてマウスGVHDモデルを用いて、M2マクロファージのGVHD抑制効果を検証しました。まず、ドナータイプであるB6マウスの骨髄細胞をGM-CSFとM-CSFのサイトカインを使って培養することで、M1とM2マクロファージの誘導に成功しました。誘導されたM1マクロファージはiNOS、TNF-α、CD38が陽性、M2マクロファージはYm-2、Arg-1、CD206が陽性であり、それぞれの特徴の細胞に誘導が可能であった。それらを用いてGVHDモデルマウスで検証したところ、M2マクロファージは有意にGVHDを抑制し、生存率の改善が見られました。臨床GVHDスコアも有意な改善を見せました。更に、GVHDの標的臓器である肝臓、皮膚、腸管において病理GVHDスコアの改善が見られました。GVHDが抑制された臓器においてはM2マクロファージの浸潤がより多く見られました。以上から、M2マクロファージによるGVHDを抑制する細胞療法が期待される結果が得られました。またin vitroの検証ではGVHD抑制メカニズムとしては液性免疫よりも細胞間の免疫作用による機序が示唆された。今後、さらに検証を積み重ねる事でヒトへの応用も期待できると考えられた。またこれらの成果は2021年にImmunity, Inflammation and Disease誌に掲載された。
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