研究課題/領域番号 |
19K08837
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉山 立樹 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (10456791)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 造血幹細胞 / ニッチ / 造血幹細胞移植 / 骨髄再構築 |
研究実績の概要 |
致死量放射線照射後にFgd5-mCherryマウスの骨髄細胞を移植したマウスを作成し、フローサイトメトリーと組織学的解析を行った。骨髄細胞のフローサイトメトリーでは既報通りFgd5-mCherryによる標識が造血幹細胞に特異的であることが確認できたが蛍光強度が低く、共焦点顕微鏡を用いた骨髄切片の組織学的解析ではmCherry陽性細胞を検出することは困難であった。そこで新たに、造血幹細胞を十分な明るさで特異的に標識するトランスジェニックマウスを作成した。まず、骨髄の各血液細胞分画に加え非血液細胞分画の網羅的遺伝子発現解析の結果を比較し、造血幹細胞に特異的に発現をする遺伝子を見出した。この遺伝子座に複数のGFP蛍光蛋白質遺伝子を2Aペプチドで連結したカセットを、CRISPR/Cas9システムを用いてノックインしたマウスを作成した。この新たに作成したマウスの造血幹細胞の蛍光強度はフローサイトメトリーで十分に高いことが確認できており、現在、骨髄組織を用いて造血幹細胞の局在解析を進めている。 C/EBPα遺伝子がEbf3と同じ染色体上にあるため、Ebf3-CreERT2; C/EBPαflox/floxマウスは作製が困難であった。そこで胎児期から四肢の間葉系細胞全てでCreを発現するPrx1-Creマウスを用いてC/EBPα cKOマウスを作製し解析したところ、海綿骨の増加と骨髄造血の低下を認めた。現在、よりCAR細胞に限局してCreが作用するLepr-Creマウスとの交配および解析を進行中である。また、CAR細胞でPPARγ遺伝子を特異的に欠損させたマウスを作成し、骨髄細胞をフローサイトメーターを用いて解析したところ造血に明確な表現型を認めなかった。現在、これらの遺伝子欠損マウスを用いて、造血幹細胞移植後の骨髄造血とCAR細胞の脂肪分化について解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造血幹細胞を特異的に標識したトランスジェニックマウスを用いた組織学的解析で、当初予定していたFgd5-mCherryマウスを用いたところ実験目的には不十分であることが判明した。新たなトランスジェニックマウスを迅速に作成することで、ほぼ遅滞なく実験を遂行している。また、CEBPαやPPARγのCAR細胞特異的な遺伝子欠損マウスを作成しCAR細胞の脂肪分化と骨髄造血について解析を続けており、計画に沿って研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の研究を継続することにより、造血幹細胞移植での骨髄再構築の過程における造血幹細胞の局在を明らかにする。これをもとに造血幹細胞が骨髄再構築で働く特別な微小環境(ニッチ)に局在し、ニッチが造血幹細胞を増幅するメカニズムを解明することをめざす。またCAR細胞の脂肪分化が骨髄再構築で果たす役割を明らかにする。
|