研究課題
成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染に起因する極めて悪性度の高い白血病である。ATL 患者では転写因子Foxp3を発現する制御性T細胞(Treg)の異常増殖が見られ、それがATL発病に関与することが示唆されている。細胞表面分子OX40LおよびOX40からの下流シグナルの活性化はT細胞の増殖を促進し、ATL細胞ではそれら遺伝子の発現が上昇している。本研究ではOX40LおよびOX40に着目し、ATLにおけるTreg細胞の増殖機構の解明を目指している。本年度は次のような結果を得た。1)一晩培養した患者ATL細胞の約40%がFoxp3を発現した。2)患者ATL細胞中のFoxp3陽性細胞ではOX40が発現し、Foxp3陰性細胞でOX40Lが発現していた。3)健常人Treg由来HTLV-1感染細胞株YT#1、およびATL患者由来細胞株026iを用いて、RNA干渉法によりFoxp3の発現を抑制したところOX40Lの発現が上昇した。一方、Foxp3の発現抑制はOX40の発現に影響を与えなかった。このことよりFoxp3がOX40Lの発現を抑制することが示唆された。4)HTLV-1感染細胞株を用いてOX40LおよびOX40の発現を抑制すると、抗アポトーシス分子や細胞周期関連遺伝子の発現が低下し、細胞増殖が抑制された。HTLV-1感染細胞株において、OX40シグナルの活性化は細胞の増殖に関与することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
患者ATL細胞およびHTLV-1感染細胞株を用いてFoxp3の発現とOX40LおよびOX40の発現の関連性を示すことができた。
健常人末梢血T細胞を用いて、OX40シグナルがFoxp3陽性T細胞の分化および増殖に関与するか解析を進める予定である。
本年度は主にHTLV-1感染細胞株を用いた解析を行ったことにより、抗体試薬の購入費用が抑えられた。次年度は、末梢血単核球からTリンパ球を単離して実験を行う予定である。次年度使用額は、Tリンパ球サブセットを同定するための抗体や細胞を単離するための試薬の購入にあてる。
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Pathogens
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