研究課題
成人T細胞白血病(ATL) 患者では、転写因子FOXP3を発現する制御性T細胞(Treg)の異常増殖が見られ、それがATL発病に関与することが示唆されている。本研究ではT細胞の増殖シグナルに関与するOX40L/OX40に着目し、ATLにおけるTreg細胞の増殖機構を明らかにすることを目的とした。ATL患者から単離した末梢血ATL細胞およびリンパ節ATL細胞を用いて、FOXP3、OX40LおよびOX40の発現をフローサイトメトリーで解析した。患者ATL細胞中のFOXP3+細胞ではOX40が発現し、FOXP3-細胞でOX40Lが発現した。次に転写因子であるFOXP3がOX40LおよびOX40の発現を制御するかどうか、FOXP3+ HTLV-1感染細胞株を用いて解析した。RNA干渉法によりFOXP3の発現を抑制すると、OX40Lの発現が上昇した。このことは、FOXP3がOX40Lの発現を抑制することを示している。一方、FOXP3の発現抑制はOX40の発現に影響を与えなかった。最終年度には、新鮮な患者ATL細胞を用いて、細胞増殖のマーカーであるKi-67とOX40の発現を解析した。ATL細胞におけるKi-67とOX40の発現には、正の相関が見られた。本研究課題ではこれまでに、HTLV-1感染細胞株において、OX40シグナルが細胞増殖に関与することを明らかにしている。ATL患者体内には、OX40L+ ATL細胞とOX40+ ATL細胞が混在する。本研究により、OX40L+ FOXP3-細胞がOX40+ FOXP3+細胞を刺激することでFOXP3+ ATL細胞の増殖を促進する可能性が示された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Frontiers in Immunology
巻: 13 ページ: -
10.3389/fimmu.2022.921606