今年度の実績:1.Wild type (WT)及びGPR15 knockout (GPR15 KO) mouseを用いて、Bleomycin(BLM)をマウス気管内投与し、TM(Thrombomodulin)または対照として生理食塩水をマウス腹腔内連日投与14日後、マウス肺胞洗浄液(BAL)中の総細胞数及び細胞分画を検討した。BLM投与14日、WTマウスではTM投与によりBAL液中総細胞数及びリンパ球数、リンパ球分画の有意な減少がみられた。GPR15 KOマウスにおいてはWTマウスと比較してBAL液中総細胞数及びリンパ球数の増加がみられたが、TMにより細胞の減少がみられなかった。 2.GPR15 ligandを用いて、BLMによる誘発されたマウス肺線維化におけるGPR15の役割を検討した。GPR15 ligandをマウス腹腔内投与により、BLMによる誘発された肺線維化を病理学的に検討した。BLM気管内投与14日後、GPR15 Ligand投与群はマウス肺組織の炎症反応及び線維化形成が抑制された。 研究期間結果のまとめ:本研究では肺胞上皮細胞及び線維芽細胞を用いたin vitro実験、また、Bleomycin (BLM)により誘発された肺線維化マウスモデルを用いたin vivo実験で、肺線維化病態における肺胞上皮細胞障害及び線維化形成に対するTM(Thrombomodulin)の作用を検討した。TMは肺胞上皮細胞を保護する作用及び線維化形成に対する抑制作用があり、そのメカニズムの少なくとも一部はGPR (G-protein coupled receptor)15と関連する。更に、GPR15は肺線維化病態において、リンパ球の分化、遊走(又は増加)を調節することにより肺線維化形成プロセスの炎症反応を抑制する。
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