研究課題/領域番号 |
19K08845
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
忠垣 憲次郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30416268)
|
研究分担者 |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30291587)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 転写因子 / RUNX1 / プロモーター |
研究実績の概要 |
RUNX1を介した造血幹細胞の発生制御、血小板産生、そしてT細胞分化に関わる分子機序の解明を目的として、RUNX1プロモーター領域の解析を行った。 RUNX1プロモーター領域(P1とP2)についてin silico解析でRunx1結合部位の存在の有無を調べた結果、P1に5箇所存在するが、P2には存在しないことが確認された。そこで、Runx1による転写活性化能をルシフェラーゼアッセイにて検討した。ヒト慢性骨髄性白血病由来K562細胞に対し、Amaxaを用いた電気パルスによりRunx1発現プラスミドとルシフェラーゼベクターを導入し、24時間後にルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、Runx1によりP1とP2共に転写は正に活性化された。次いでHeLa細胞に対し、Runx1による転写活性化能をルシフェラーゼアッセイにて検討した。24 well plateに播種したHeLa細胞に対し、リポフェクション法によりRunx1発現プラスミドとルシフェラーゼベクターを導入し、24時間後にルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、Runx1によりP1とP2共に転写は活性化されなかった。次に、Runx1コンセンサス配列に結合しないRunx1変異体Aと転写活性化ドメインを欠くRunx1変異体Bを用いて、K562細胞に対して転写活性化能をルシフェラーゼアッセイにて検討した。その結果、P1では変異体Aにより転写は正に活性化されたが、変異体Bでは転写は活性化されなかった。P2では変異体A、Bにより転写は活性化されなかった。 以上より、Runx1遺伝子発現メカニズムの一つとして、Runx1自身がプロモーター領域に結合しその発現を制御すること、また細胞株によりその制御のされ方が異なり、P1とP2ではRunx1と結合するコファクターが異なる可能性があることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通りRunx1プロモーターについてレポーターアッセイを行い、Runx1自身がRunx1のプロモーター領域に結合しその発現を制御すること、P1とP2でRunx1と結合するコファクターが異なる可能性があることが示唆される結果が得られた。一方、当初の予定ではP1とP2に結合する新規転写因子を探索し転写因子を同定する予定でいたが、未だ同定できていないことから少し進捗が遅れていると思われる。ただ、新たにP1とP2ではRunx1と結合するコファクターが異なる可能性があることを見出せたことは、今後Runx1自身によるRunx1遺伝子発現を詳細に解明していくうえで役に立つ結果であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、RUNX1発現制御の分子機構を解明するため、P1とP2に結合する新規転写因子を探索する。P1とP2に結合する転写因子が複合体を形成し、間接的にDNAと結合して転写調節に与るタンパク質が存在する可能性も考えられることから、DNAアフィニティーカラムにより細胞核抽出液からP1とP2に結合するタンパク質を精製する。その後質量分析装置を用いてP1とP2に結合する新規タンパク質の同定を行う。同時に、Runx1による転写活性がP1とP2で異なる可能性があるため、コファクターを介した間接的な作用であるかを検討し、Runx1自身のRunx1プロモーター領域に対する作用の評価を確定する。また、間接的な場合この転写作用に影響を与えるコファクターはどのようなものかなどについて検討し、近傍に結合する他の造血関連転写因子群との機能協調や転写ネットワークの解明を試みたい。さらに培養細胞を用いたRUNX1発現制御に係るシグナル伝達経路の探索を試みたい。
|