研究課題/領域番号 |
19K08850
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏治 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (70077808)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗凝固薬 / DOAC / 抗腫瘍効果 / 組織因子 / 第Xa因子 / エドキサバン / PAR2 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
直接経口抗凝固薬(DOAC)は非弁膜症性心房細動患者の脳血栓塞栓症や下肢膝股関節術後患者の血栓塞栓症の発症予防に汎用されている。一方、血栓症を併発する癌患者への第Xa因子特異的阻害薬の低分子ヘパリンによる抗凝固療法は癌患者の腫瘍縮小や延命効果のあることが示唆されている。そこでDOACの抗腫瘍作用の有無についてマウスを用いて解析した。 マウス大腸癌Colon26細胞を接種した雄性BALB/cマウスにDOAC(dabigatran etexilate、rivaroxaban、edoxaban tosylate: EDX)を経口投与し、その後の腫瘍増殖に及ぼす影響を解析した。またDOAC投与後21日目の腫瘍組織における凝固炎症関連因子、PAR1、PAR2、腫瘍細胞増殖関連因子、アポトーシス、炎症関連転写因子などを解析した。 その結果、Colon26接種マウス(対照群)に比較して、DOAC投与群では特にEDX投与群において投与量依存性の有意な腫瘍増殖抑制作用が認められた。EDX投与群では対照群マウスの血中に増加するIL-6及び癌細胞の浸潤・転移促進因子MMP-2の有意な発現低下が認められた。EDX投与群の腫瘍組織では対照群に比較して、PAR2の有意な発現低下、IL-6に応答する転写制御因子STAT3、細胞周期調節因子CD1/CD2 及び細胞増殖因子Ki67の有意な発現低下が認められた。また対照群の腫瘍組織で増加したNFκBとIκBαはEDX投与群では減少し、EDX投与群ではNFκBの核内への取り込み増加と癌抑制因子p53の有意な発現増加が認められ、さらに対照群に比較してアポトーシス細胞の有意な増加が認められた。 今後は引き続き、Colon26細胞における第Xa因子ーPAR2関連シグナル伝達系因子の解析、及びPAR2-KOマウスを用いた解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は前年度末から始まった新型コロナウイルス感染の蔓延により、実験を担当する学生、大学院生の登校減少、教員の大学へ出勤控えなどが大きく影響し、マウスを用いた継続的実験の実施が大変難しかった。 そんな状況下ではあるが、研究実績の概要に記載したように、第Xa因子特異的DOACの一つであるエドキサバンにPAR2経路依存性の腫瘍増殖に対する抗腫瘍作用(細胞増殖の抑制とアポトーシスの亢進)があることを明らかにできたことは意義ある成果だと考えられる。 また、昨年度に引き続き、極めてゆっくりではあるが、個体数を増やしたPAR2-KOマウスを用いて腫瘍増殖に関する研究を進めており、これからの研究が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はいよいよ新型コロナワクチンの大規模な臨床使用が始まり、4月中旬からは医療従事者への投与、5月中旬からは私を含む高齢者への投与が開始され、秋ころまでには学生や大学院生へのワクチン投与が完了する予定と言われている。そうした状況になれば、実験研究の進展も期待できるので、現状ではコロナウイルス感染を避けて無理な実験研究は行わず、安心して実験研究ができる時に備えて準備を進めておきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナ感染症の蔓延により、学生等の登校自粛があり、計画通りの研究活動が出来なかった。この夏ごろからはワクチン接種が進み、秋ごろには研究活動が進むと期待されるので、残額はそのころに動物や試薬等の購入費に充てる予定である。
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