研究課題
直接経口抗凝固薬(DOAC)は非弁膜症性心房細動患者の脳血栓塞栓症や下肢膝股関節術後患者の血栓塞栓症の発症予防に用いられている。一方、血栓症併発癌患者への低分子ヘパリンなどの第Xa因子特異的阻害薬の投与により、癌患者の一部に抗腫瘍効果がみられたとの報告がある。そこで我々はDOACの抗腫瘍作用について担癌マウスを用いて解析した。2020年度までに、マウス大腸癌Colon26細胞を接種した雄性BALB/cマウスにDOAC(dabigatran etexilate、rivaroxaban、edoxaban tosylate: EDX)を経口投与し、腫瘍増殖に及ぼす影響を解析した結果、Colon26接種マウス(対照群)に比較して、DOAC投与群のうち特にEDX投与群では投与量依存性の有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。EDX投与群では対照群マウスの血中に増加したIL-6及びMMP-2の有意な発現低下が認められた。また腫瘍組織では、EDX投与群では対照群に比較して、PAR2の有意な発現低下、IL-6応答転写制御因子STAT3、細胞周期調節因子CD1及び細胞増殖因子Ki67の有意な発現低下が認められた。さらに対照群の腫瘍組織に比較して、癌増殖抑制因子p53の有意な発現増加とアポトーシス細胞の有意な増加が認められた。そこで2021年度は、Colon26細胞自体が発現する凝固・炎症因子の発現とColon26担癌マウス血中のトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)に及ぼすEDX投与の影響を解析した。その結果、Colon26細胞は凝固促進作用を有する組織因子(TF)の他、PAR1、PAR2、IL-6などを発現すること、また、Colon26担癌マウスで増加したTATはEDX投与で有意に低下することを認めた。現在、これらのデータをまとめて国際雑誌に投稿する準備を進めている。
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