研究課題
成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の長期感染期間を経て発症することから、HTLV-1感染細胞の遺伝子異常に加え、エピジェネティックな異常や宿主の老化との関連が示唆される予後不良の悪性疾患である。一方、サーチュイン(SIRT1~7)は長寿遺伝子として注目されており、エネルギー代謝からがん化に至る多くの生命機能に関与している。申請者は、SIRT1がATL患者で高発現し、新規合成したサーチュイン阻害剤がin vitroでアポトーシス及びオートファジーを介してATL細胞の細胞死を導くことを報告した。しかし、がん化の促進因子であるSIRT7に特異的な薬剤に関する報告はない。本研究では、エピジェネティックを標的とした新規SIRT2阻害剤のin vivoでの効果及び新規SIRT7阻害剤による白血病細胞株の細胞死について検討する。新規SIRT2阻害剤(20mg/kg)のATLモデルマウスへの腹腔内投与(週3回)後、48週齢でのATL発症マウスの匹数及び腫瘍量を指標に、ATLの発症予防及び抗腫瘍効果を評価した。ATLモデルマウスにおいて、新規SIRT2阻害剤は腫瘍細胞の臓器浸潤を抑制したが、腫瘍体積を有意に減少させなかった。新規SIRT7阻害剤合成の進捗が遅れている。一方、サーチュイン活性化剤は乳癌において抗腫瘍効果を示すとの報告があることから、SIRT7阻害剤合成後の更なる評価系の充実に向けてSIRT1活性化剤をin vitroで評価した。SIRT1活性化剤はアポトーシスを伴う細胞増殖抑制効果を示した。今後、新規SIRT7阻害剤をはじめとするエピジェネティックを標的した薬剤のATL細胞における検討を行い、エピジェネティック制御薬剤の臨床応用に対する可能性を探索したい。
3: やや遅れている
2つの目標のうち①に遅れが生じているため。①の評価系の充実に向けて、in vivoにおけるエピジェネティック制御薬剤の評価を予定している。目標①Ex vivo及びin vitroにおける新規SIRT7阻害剤の細胞増殖抑制効果とそのメカニズム目標②In vivoにおける新規サーチュイン阻害剤の抗腫瘍効果及び腫瘍免疫への影響
目標①Ex vivo及びin vitroにおける新規SIRT7阻害剤の細胞増殖抑制効果とそのメカニズム:新規SIRT7阻害剤の合成を急ぐ。そこで、SIRT7阻害剤合成後の更なる評価系の充実に向けてエピジェネティック制御薬剤のin vitroでの評価を行う。目標②In vivoにおける新規サーチュイン阻害剤の抗腫瘍効果及び腫瘍免疫への影響:SIRT2阻害剤を20mg/kgに増やして検討したところ、ATLマウスにおいて腫瘍体積の減少は確認出来なかったため、in vitroで細胞増殖抑制効果が確認された薬剤での検討を予定する。
コロナウイルス感染拡大のため、国際学会での発表が不可能であった。今年度は、オンライン開催の国際学会を含め、国内外の学会で発表する予定である。また、in vitroで細胞増殖抑制効果が認められたエピジェネティック制御薬剤を用いて、in vivoにおけるマウスの実験例数を増やす予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Autophagy
巻: 17 ページ: 1-382
10.1080/15548627.2020.1797280
Life Sci
巻: 252 ページ: 117665
10.1016/j.lfs.2020.117665.