研究課題/領域番号 |
19K08853
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
勝見 章 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (80378025)
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研究分担者 |
天野 睦紀 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90304170)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Rho GTPase / アラキドン酸 / 血栓形成 |
研究実績の概要 |
アラキドン酸リポキシゲナーゼ(ALOX)とその下流の脂質メディエーターは動脈硬化、血小板凝集、慢性炎症、がんの進展などに関与する多機能蛋白である。ALOX下流の脂質メディエーターについては活発に研究が行われているが、上流の制御メカニズムについては殆ど報告がなされていない。当該研究ではALOXの細胞内局在をRho family GTPaseが制御しており、動脈硬化部位、免疫器官など多様な臓器に脂質メディエーターをリクルートする際に Rho-ALOX経路が重要であるという仮説を証明するために蛋白生化学、マススペクトロメトリー、加齢マウスモデル等を用いた実験を計画した。我々はRhoA, Rac1,Cdc42などに加え、RhoH, Rac2等の血球特異的GTPaseをbaitにした網羅的アフィニティクロマトグラフィーとそれに続くマススペクトロメトリー(LC/MS-MS)の実験系を確立し、GTP結合型の活性型活性型RhoAに特異的に結合する複数の蛋白を同定した。そのうちアラキドン酸リポキシゲナーゼ-12(ALOX12)が活性型RhoAに結合することを見いだした。RhoAとALOX12をCOS-1細胞内で発現したところ両者の直接の結合は認められなかった。一方でRhoAエフェクターforminとALOX12の結合が発現実験で証明された。このことからALOX12はforminを介して活性型RhoAに結合することが強く示唆された。GTPase阻害剤による実験により、ALOXとの活性化依存性の結合が明らかになったRho family分子を同定した。GTPase阻害剤を内因性のALOXが発現した細胞に添加し、脂質メディエーター(ロイコトリエン、リポキシン、HETEなど)の産生抑制を定量する実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではRhoファミリーGTPaseをbaitにした網羅的アフィニティクロマトグラフィーとそれに続くマススペクトロメトリー(LC/MS-MS)の実験系を確立し、血小板細胞質分画からGTP結合型の活性型活性型RhoAに特異的に結合する複数の蛋白を同定した。そのうちアラキドン酸リポキシゲナーゼ-12(ALOX12)が活性型RhoAに結合することを見いだした。RhoAとALOX12の直接の結合は認められなかったが、RhoAエフェクターforminとALOX12の結合がCOS-1細胞での発現実験で証明され、ALOX12はforminを介して活性型RhoAに結合することが判明した。GTPase阻害剤による実験により、ALOXとの活性化依存性の結合が明らかになったRho family分子を同定した。GTPase阻害剤を内因性のALOXが発現した細胞に添加し、脂質メディエーター(ロイコトリエン、リポキシン、HETEなど)産生抑制を測定する系を既に確立している。以上のことから研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)巨核球細胞株MEG-O1、CMK-86にL63RhoA(活性型)とN19RhoA(不活性型)を発現し、培養上清中の12-HETE産生がL63RhoAにより亢進することを確認する。さらに活性型RhoAによる12-HETE産生亢進がRhoA、forminの阻害薬であるC3 toxin、SMIFH2により抑制されるが、Rho-kinase阻害剤Y-27632では抑制されないことを証明する。 2)GST-forminを洗浄血小板に混和しcytoplasmicアクチン重合アッセイとpyreneラベル精製アクチンアッセイの双方でアクチン重合の定量を行い、12-LOX阻害剤ML355によりformin上でのアクチン重合が阻害されるかどうか検討する。これにより12-LOXがforminを介したアクチン重合を制御していることを証明する。また、ML355の添加による血小板のアクチン形態変化をRhodamine Phalloidin染色で観察する。 3)RhoA欠失マウスから分離した血小板の、アゴニスト刺激時の12-LOXの局在、12-HETE分泌量をそれぞれ免疫染色、ELISAで測定し、野生型マウス血小板と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、アフィニティクロマトグラフィー、シグナル伝達実験はすべて所属機関および名古屋大学に設置されている機器および専門オペレーターによりデータを得ることができ、経費の削減ができたため。 (使用計画) 令和4年度は国立長寿医療研究センターにおいて巨核球細胞株を用いたRhoA強制発現、また阻害薬による細胞生物学的研究、アクチン重合アッセイ、RhoA欠失マウスから分離した血小板を用いた実験のために予算執行をしていく。
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