研究実績の概要 |
アラキドン酸リポキシゲナーゼ(ALOX)とその下流の脂質メディエーターは動脈硬化、血小板凝集、慢性炎症、がんの進展などに関与する多機能蛋白である。ALOX下流の脂質メディエーターについては活発に研究が行われているが、上流の制御メカニズムについては殆ど報告がなされていない。本研究ではALOXの細胞内局在をRho family GTPaseが制御しており、動脈硬化部位、免疫器官など多様な臓器に脂質メディエーターをリクルートする際に Rho-ALOX経路が重要であるという仮説を証明するために蛋白生化学、マススペクトロメトリー、加齢マウスモデル等を用いた実験を計画した。我々はRhoA, Rac1,Cdc42などに加え、RhoH, Rac2等の血球特異的GTPaseをbaitにした網羅的アフィニティクロマトグラフィーとそれに続くマススペクトロメトリー(LC/MS-MS)の実験系を確立した。この実験系を用いて、GTP結合型の活性型活性型RhoAに特異的に結合する複数の蛋白を同定した。そのうちアラキドン酸リポキシゲナーゼ-12(ALOX12)が活性型RhoAに結合することを見いだした。RhoAとALOX12をCOS-1細胞内で発現したところ両者の直接の結合は認められなかった。一方でRhoAエフェクターforminとALOX12の結合が発現実験で証明された。このことからALOX12はforminを介して活性型RhoAに結合することが強く示唆された。GTPase阻害剤を内因性のALOXが発現した細胞に添加し、産生される脂質メディエーター(ロイコトリエン、リポキシン、HETEなど)を定量する実験系を確立した。
|