研究課題/領域番号 |
19K08865
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮城 聡 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (20400997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 造血支持細胞 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
骨髄間質細胞の一部、は血液の産生を助ける働きを持つ(造血支持細胞)。これまでに、複数の造血支持細胞が同定されているが、これらの関係性や造血支持細胞がどのように産生されるのか? は明らかになっていない。我々は、造血支持細胞の祖先となる幼弱な間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell; MSC)とその子孫細胞を標識可能なレポーターマウスを作成し、造血支持細胞が産生される過程やその動態、さらに、種々のシグナルによる制御機構を明らかにすることを最終的な研究目標としている。 我々は、これまでに、PDGFRαとSca1を共発現する非造血細胞(PαS)が幼弱なMSCとしての能力を有すること、PαSが移植に伴い造血支持細胞マーカーを発現すること、さらに、Fzd5遺伝子がPαS特異的に発現することを見出し、PαSが造血支持細胞の祖先であると想定している。また、Fzd5の発現制御領域下でCreERTと赤色蛍光タンパク質(tFP635) を発現すマウス(Fzd5-CreERT-tFP635)を作成した。このマウスとCAG-CAT-EGFPを交配することにより、PαSがtFP635で、タモキシフェン誘導性にPαSの子孫細胞がGFPで標識可能なレポーターマウス(Fzd5-EGFP)を作成可能であると考えられる。 令和元年度は、Fzd5-CreERT-tFP635におけるtFP635の発現特異性を検討し、tFP635が PαSに加えて、造血支持細胞であるLeptin receptor 陽性のMSC(Lepr-MSC)でも発現することを見出した。さらに、Fzd5-EGFPでは、PαS、Lepr-MSC、脂肪前駆細胞、骨芽細胞前駆細胞、間質細胞でのGFP陽性率が系時的に上昇し、タモキシフェン投与後10ヶ月間は維持された。この結果は、Fzd5陽性細胞が機能的なMSCであることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、Fzd5-CreERT-tFP635におけるtFP635の発現解析やレポーターマウス(Fzd5-EGFP)を用いた細胞系譜追跡実験等を行った。この研究成果を元に、研究方針の修正が必要であると考えられる(【今後の研究の推進方策】を参照)が、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
申請時、Fzd5-CreERT-tFP635においてtFP635がPαS特異的に発現すると想定していたが、昨年度の解析により、PαSに加えて骨髄中の主要なMSC であるLepR-MSCでも発現することが判明した。このため、当初予定していたPαSから造血支持細胞に至る細胞系譜の同定には、我々のマウス系統は適さないと考えられる。同様の理由で、Fzd5-CreERT-tFP635を用いてPαSおよびにその下流細胞において造血支持因子をノックアウトすることは難しいと予想される。一方で、Fzd5-CreERT-tFP635では、骨髄中の主要な2種類のMSCを一度に標識可能である。この特性を生かして、炎症や骨髄抑制等のシグナルが、MSCから間葉系細胞(脂肪、骨、軟骨系統)およびに造血支持細胞を含む間質細胞への分化に及ぼす影響を細胞系譜追跡実験により検討する。また、定常状態での細胞系譜追跡実験の長期観察(タモキシフェン投与後1年まで)を行う。さらに、昨年度の解析から、tFP635の発現の有無でPαSを2つのサブポピュレーションに分離可能であること、さらに、tFP635陽性集団が陰性集団に比べて幼若な性質を有することを見出した。今年度は、この結果をコロニーアッセイや移植実験等により検証する。
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