白血病形成の1st hitであるMLL融合遺伝子形成のメカニズムを解明するために、MLL融合遺伝子陽性白血病における遺伝的背景の関与について、iPS細胞モデルを用いて解析を行った。MLL融合遺伝子陽性の白血病患者およびコントロール(健常成人)の末梢血よりiPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞をCD34陽性の造血前駆細胞に分化させ、B系統細胞への分化を行った。得られた浮遊細胞を用いてコロニーアッセイを行い造血前駆細胞の増殖能力を評価した。対照として健康成人の末梢血から樹立したiPS細胞を用いた。解析したすべてのiPS細胞で、CD34陽性の造血前駆細胞はほぼ同じ割合で産生された。 Bリンパ球への分化により付着細胞に接着した浮遊細胞として造血細胞が認められ、この細胞群の中にCD19陽性、IL7受容体(CD127)陽性のBリンパ球前駆細胞の存在を確認した。このBリンパ球分化の過程において、MLL融合遺伝子の形成の有無をinverse PCR法により検討したところ、患者由来のiPS細胞から得られた造血細胞で低頻度ではあるがMLL融合遺伝子の形成が認められた。対照として用いた健常成人由来のiPS細胞ではMLL遺伝子の再構成は認められなかった。Topoisomerase-II阻害剤であるEtoposideの影響を検討するために、CD34+細胞をEtoposideで処理した後に同様のBリンパ球分化を行ったが、MLL融合遺伝子は検出されなかった。患者のiPS由来造血細胞におけるMLL融合遺伝子の生成にEtoposideは必ずしも必要ではなく、患者の有する何らかの遺伝的背景がMLL遺伝子の再構成に関与している可能性が示唆された。
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