研究課題/領域番号 |
19K08869
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
上地 珠代 宮崎大学, 医学部, 准教授 (10381104)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リボソームタンパク質 / 貧血 / ゼブラフィッシュ / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
リボソームの生合成に関わる因子の異常が、様々な疾患に関与することが強く示唆され、これらはリボソーム病と呼ばれている。リボソームがどの細胞でも均一なタンパク質合成装置として機能しているわけではなく、翻訳の制御機構に組織特異性があるために、その機能に関わる因子の異常によって異なる疾患が引き起こされると推測している。本研究では、リボソーム病の一つであるダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)のゼブラフィッシュモデルを用いて発症の分子経路の解明を目指す。これまでに、リボソームタンパク質(RP)S19遺伝子の発現抑制によって、造血や糖鎖修飾に関与する遺伝子の翻訳効率が低下することを見出した。さらに、ゲノム編集により患者変異を再現した個体を用いた解析を目指している。CRISPR/Casシステムを応用し、crRNA-Cas9タンパク質複合体と変異を導入した一本鎖DNAをゼブラフィッシュ胚に注入することで、ゲノムへの任意の変異の導入を試みた。各因子の濃度を変えた組み合わせを検討し、繁殖可能なF1世代を得ることができた。また、DBA患者(83症例81家系)のDNAを用いたエキソーム解析を行った。その結果、新たに2つの原因候補遺伝子を同定した。rRNAのプロセッシングに関与することが示唆される遺伝子と、リボソーム前駆体の形成に関与する遺伝子であった。いずれのゼブラフィッシュオルソログもヒトとの保存性が高いため、個体を用いた機能解析を進め造血との関連性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集を加えたゼブラフィッシュが繁殖可能な段階まで成長したため、患者の変異を正確に再現した個体を用いた解析が可能になることと、新たな責任候補遺伝子の機能解析により新たな知見が得られることが期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖修飾に関与する遺伝子が、ゼブラフィッシュ胚の初期造血器官であるICMで強く発現することから、この遺伝子の翻訳効率の低下が赤血球の造血に大きな影響を及ぼしている可能性が高いと推測している。そこで、この糖鎖修飾を受けるタンパク質についてゼブラフィッシュを用いて機能解析を行う。解析対象は、造血に関与することが既知であるもの、これまでのRNA-seq解析(ポリソームを形成するmRNAの解析)から発現量が大きく変動するものから絞り込む。また、新たな責任候補遺伝子の機能解析も行い、これまでの成果と合わせてDBAの発症機序を理解する手がかりを掴むことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国内、国際学会がすべてオンライン開催となり旅費が発生しなかったため。実験を進めるための人件費・謝金として計上する予定である。
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