リボソームの生合成に関わる因子の異常が、様々な疾患に関与することが強く示唆され、これらはリボソーム病と呼ばれている。リボソームがどの細胞でも均一なタンパク質合成装置として機能しているわけではなく、翻訳の制御機構に組織特異性があるために、その機能に関わる因子の異常によって異なる疾患が引き起こされると推測している。リボソーム病の一つであるダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)の患者ではリボソームタンパク質(RP)S19遺伝子の変異が最も多く確認される。また、DBA患者では将来的にがん(固形がんを含む)を発症するリスクが高いこともわかってきた。本研究では、ゼブラフィッシュを用いてDBAモデルを作製し、疾患発症の分子経路の解明を目指す。 ゲノム編集によってゼブラフィッシュのrps19遺伝子、およびがん抑制遺伝子tp53のindel変異体(それぞれ複数種類)を作製した。rps19にヘテロ変異を持つ5つの系統では、1年半から2年以内に13ー50%の個体で腫瘍形成を確認した。組織切片では異型紡錘形細胞の束状配列が観察されたことから、tp53変異体と同様にMPNST(悪性末梢神経鞘腫)を形成したと考えた。さらに腫瘍組織からRNAを精製してがん関連遺伝子の発現解析を行ったとところ、優位に発現量が上昇する遺伝子を見出した。これら遺伝子およびさらに上流因子の翻訳効率の変化を解析することで、RP遺伝子の変異によるmRNA特異的な翻訳調節の異常を解明する手がかりをつかめると期待している。
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