研究課題/領域番号 |
19K08871
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小船 雅義 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90336389)
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研究分担者 |
井山 諭 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50398319)
池田 博 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60570132)
後藤 亜香利 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60722387)
菊地 尚平 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80515792)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / 骨髄間葉系幹細胞 / マイクロRNA / 急性骨髄性白血病 |
研究実績の概要 |
急性骨髄性白血病(AML)由来の細胞外小胞中に高濃度に内包されるマイクロRNAであるmiR-7977について解析を行った。AML細胞内および骨髄間葉系幹細胞(MSC)内のmiR-7977濃度を定量的PCRで測定したところ、AML細胞内のmiR-7977は、MSC内のそれに比べ、約100倍高度であった。申請者らは、これまで骨髄間質液中の細胞外小胞中にmiR-7977が高度に内包されていることを報告してきたが、miR-7977は細胞外小胞が骨髄性白血病細胞由来であることを示すマーカーの一つと考えられた。また、骨髄間質液中の細胞外小胞中miR-7977は白血病細胞由来であることが示唆された。次に、miR-7977の機能について解析を行った。miR-7977のmimicを市販のMSCに導入し、コントロールを導入したMSCと比較解析を行った。その結果、miR-7977導入MSC細胞内で、STEAP3, GDF15, SLC7A11の遺伝子発現が増加し、STK4, ZNF439, STEAP1, SOD2, ZNF383, PCBP1, MT1X, VAMP3の発現低下が認められた。これらの遺伝子は、スプライシングの他、鉄、銅、亜鉛代謝、Hippoシグナルに係わることから、今後、パスウエイ解析やGene set enrichment(GSEA)解析などを用い、miR-7977がMSCに引き起こす異常に関して、より詳細な検討が必要と考えられた。また、急性骨髄性白血病(AML)由来の細胞外小胞中には、miR-7977の他に、miR-8073やmiR-4286が高濃度に内包されていることも明らかとなった。文献を検索するとmiR-8073およびmiR-4286の機能の解析は他の癌腫で進められているが、造血組織での解析は進められておらず、今後の研究の進展状況によっては、これらのマイクロRNAの解析も必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は造血器腫瘍性疾患における骨髄内細胞外小胞による間質細胞機能の異常を、より詳細に解析する点で、ある程度順調に進行した。また、正常化した細胞外小胞を作用させることにより、血球細胞や異常間質をリプログラミングできるかという課題については、細胞、プロトコールなどを含め、ある程度準備が進んでいるため、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のごとく、骨髄内細胞外小胞による間質細胞機能の異常については、バイオインフォマティクスを利用し、パスウエイ解析やGSEA解析などにより解析対象を絞り込み詳細に研究を推進する予定である。継代数の少ないMSCは購入済であるが、iPS細胞由来間葉系幹細胞は作成準備中である。まず、老化MSCとの機能比較を行う予定である。次に、それら細胞由来の細胞外小胞のマーカーを詳細に解析するほか、他の細胞に作用させた後の機能解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS-MSCの分化誘導プロトコールには様々な手法があり、最も優れた手法を文献的に再検索するのに時間を要した。プロトコールを定めたが、次年度に必要試薬を購入することとし、2019年度内に試薬発注はしなかったため次年度使用額が生じた。
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