研究課題
多発性骨髄腫(multiple myeloma: MM)は既存の治療戦略による完治が困難な難治性造血器腫瘍である。研究代表者らは、先行研究において分子腫瘍学的異常が高度で複雑、かつ、症例間で不均一であることが問題となってきたMMにおいて、RAS/RAF/MEK/ERKシグナル経路の最後尾においてシグナル媒介分子として機能するセリン・スレオニンキナーゼ RSK2のN末端キナーゼドメイン(N-terminal kinase domain: NTKD)が恒常的に活性化しており、病態形成・治療抵抗性獲得を司っていること、普遍的な治療標的分子に成り得る可能性を見出した。そこで、本研究では「MMに対するRSK2を標的とした創薬開発」を目指した研究を行った。具体的には、まず、MMにおけるRSK2被制御分子のメルクマール分子を複数特定し、BTG2など、その発現誘導を指標とした化合物スクリーニング法を確立した。さらにMMに対する分子標的薬としての効果の増強戦略の検討を行い、AKT, S6KはRSK2の機能を補完していること、RSK2/AKT/S6K同時阻害によってMYK経路、mTOR経路、VEGF経路、各種のサイトカインシグナル経路を同時に制御し、多様な分子病型に関わらず普遍的な抗腫瘍効果を発揮しうることを見出した。これらにより理論的基盤を構築したうえで、ヒット化合物のスクリーニング、ならびに候補化されたヒット化合物の中からリード化合物の選定を進め、リード化合物として複数の5H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-6(7H)-one誘導体を同定するに至った。また、この化合物はMMのみならず様々な他の成熟リンパ系腫瘍に対しても有効性が期待できることも明らかになった。今後、複数のリード化合物からのヒット化合物の選定、ならびに前臨床試験での開発へと研究を進める予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Int J Mol Sci.
巻: 23 ページ: 2919-2936
10.3390/ijms23062919.
Blood Adv
巻: 6 ページ: 1932-1936
10.1182/bloodadvances.2021005876.
J Clin Exp Hematop
巻: 61 ページ: 71-77
10.3960/jslrt.20033
http://www.kpum-hematology.net/study/study02.html