研究課題
新生血小板中のミトコンドリアの分裂に関して検討した。ミトコンドリアの分裂にはMdv1が関与していることが知られている。そこでマウスにMdv1阻害剤を投与した。抗血小板抗体を投与したマウスではあきらかな血小板数の回復遅延は認めなかったが、新生血小板のオルガネラの質については、検討を続けている。新生血小板は血球回復期(トロンボポエチン刺激の亢進期)に増加し、トロンボポエチンは血小板細胞膜上のMPL(トロンボポエチン受容体)に結合するが血小板上のMPLを測定することは難しいことが解った。また一方新生血小板はより小胞体、autophagosome、ミトコンドリアを豊富にもつので、血小板内でトロンボポエチン刺激で発現亢進すると想定されたPDLー1蛋白に注目した。初めにヒト血小板の小胞体と細胞膜上の蛋白の関係を調べるために、PDL-1蛋白の発現を調べた。PDL-1はJAK2シグナルにより発現が制御されることが知られているので、JAK遺伝子変異(恒常活性型変異JAK2V617F変異)を持つヒト検体を用いて検討した。健常人に比べて、JAK2遺伝子変異由来の血小板は、PDL-1の発現が亢進していたが、JAK2遺伝子変異量との相関を認めなかった。これにはPD-1を発現する他の免疫細胞との関係が重要である可能性が考えられた。次に血小板PDL-1発現と特定の免疫細胞との相関を調べ、特定のリンパ球のサブセットに相関を認めることが判明した。本年度はこれらの結果を論文化している。
2: おおむね順調に進展している
ヒト血小板における、オルガネラ、遺伝子変異、PDL-1蛋白の発現の解析から、予想外に特定の免疫細胞との関連を見出しつつある。今後は従来の目標に加えて血小板産生場所である骨髄組織も検討を加える予定。
今後は、想定分子の遺伝子改変マウスが予想と一致した止血能低下の表あkに加え、腫瘍形成能なども検討に加え免疫細胞との関連を検討に加える。
パンデミック期につき、学会発表はWEB開催となり旅費は使用しなかった。一方で抗体の消費量が予定よりも増加し、消耗品費が増加した。次年度も抗体使用量が多い為消耗品で必要となる予定。
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