研究課題
向血栓細胞である単球が合成したプロトロンビン(PT)蛋白を、PT/MHC class II複合体として抗原提示し、その複合体を抗リン脂質抗体であるホスファチジルセリン依存性抗ヒトプロトロンビン抗体(aPS/PT)が認識することで、血栓発症の病態に関わるのではないかと仮説を立て、下記実験を行なった。実験1は PTとMHC class IIを強制発現したHEK293T細胞を用いて、PT/ MHC class II複合体が細胞表面に輸送されるかを抗PT抗体とaPS/PT を用いて、フローサイトメリー(FCM)で確認した。Phorbol-12-myristate-13-acetate (PMA)刺激下でヒト単球細胞(THP1)において、PTのmRNAおよびタンパクが発現すること、さらにPMAで刺激したTHP1およびAPS患者の単球は、抗PT抗体よりも、aPS/PTと強い結合を示すことを確認した。単球でPTが合成される現象が、APSにおいて血栓の契機となるのかを明らかにするためにPTを合成した単球を用いてトロンビン産生能を組織因子の発現、ROTEM(rotational thromboelastometry)で行った。組織因子の発現は確認できたが、ROTEMでは明らかなトロンビン産生の更新は確認できなかった。これまでPTは肝臓で合成される凝固タンパクとされていたが、以上の結果より単球でもPTが合成され、さらに単球が合成するPTがaPS/PTの抗原である可能性が高いことが示唆された。単球と肝臓で合成されるPTの違いがaPS/PTのantigenicityに寄与しているかどうか、プロトロンビンを合成する単球がAPSの病態にどのように関わっているのかを今後さらに検討を進める。
2: おおむね順調に進展している
プロトロンビン合成単球という新たな単球サブセットが発見された。プロトロンビン合成単球の割合、機能などを検討する予定である。
抗リン脂質抗体症候群の患者でプロトロンビン合成単球が存在する患者の特徴を明らかにする。治療前後でのプロトロンビン合成単球の割合の変化を確認する。
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