研究課題
成人食物アレルギーでは、生涯にわたり原因食物の除去を要することが多く、誤食によりアナフィラキシーなどの重篤な病態をきたすため、新たな治療戦略の確立が望まれる。今回、OVA/Alumの感作チャレンジによる食物アレルギーモデルを用いることで、IL-21R欠損マウスではIgEの産生増強がみられるものの臨床症状に乏しく、その機序としてIL-21が腸管への肥満細胞の集積を増強することを明らかにした(Clin Exp Allergy 2019 Kono et al.) 。食物アレルギーのキープレーヤーであるIgEと肥満細胞が、一つの因子により異なる方向に制御されうることが示された。さらにTh1/Th2分化の制御転写因子であるT-betとSTAT-6を共欠損したマウスの皮膚では、好酸球や肥満細胞だけでなくCD4陽性細胞も浸潤し、IL-9産生が増強することでアトピー性皮膚炎様の病態をきたすことを示した。その機序として両転写因子を欠損したCD4陽性細胞ではTSLP 受容体が高発現となりIL-9産生が増強する可能性が考えられた (J Invest Dermatol 2021 Makita et al.)。皮膚は食物アレルギーの感作経路としてその重要性は注目されており、この経路に関連するIgE産生制御を解析中である。また、腸管粘膜常在の好酸球はIgAクラススイッチングなど腸管の恒常性維持に関わることが明らかとなってきた。野生型マウスと好酸球欠損マウスであるΔdblGATA マウスそれぞれの、上部小腸の粘膜固有層の解析において、経口免疫寛容誘導に重要とされるCD103陽性樹状細胞(CD103+DC)に差は見られなかったが、末梢性制御性T細胞(pTreg)のCD4陽性T細胞における割合は、ΔdblGATA マウスで低下していた。好酸球によるIgE産生制御について解析を継続している。
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J Invest Dermatol
巻: 141(5) ページ: 1274-1285
10.1016/j.jid.2020.08.029