研究実績の概要 |
プロテアソーム関連自己炎症性症候群PRAAS と同様の変異を持つPsmb8 ミスセンス変異ノックインマウス(Psmb8-KI マウス)を樹立し解析を行った。Psmb8-KI マウスは炎症病態を自然発症しないことから、イミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導モデルを用い解析を行ったところ、Psmb8-KI マウスは野生型マウスと比較して炎症発症が早期でかつ増悪した。炎症性サイトカイン遺伝子(IL-6, TNFα, IFNγ)発現も高かったため、各サイトカイン中和抗体、サイトカインのシグナル伝達を阻害するJAK1/2阻害剤(Baricitinib)を用いて炎症が収束するかを確認したところ、ある程度炎症は抑えられるが、野生型マウスと比較して依然強い炎症を呈していた。このことから炎症性サイトカインの影響は部分的であると考えられ、ほかに炎症を惹起、増悪する因子があることが考えられた。プロテアソーム阻害剤を添加したマウスマクロファージ細胞株を用いたマイクロアレイ解析の結果、プロテアソーム阻害群でCxcl9、 Cxcl10発現が増加していることを見出し、またPsmb8-KI マウスのイミキモド塗布炎症部位においてもCxcl9, Cxcl10遺伝子発現が高いことを明らかにした。 CXCL9、CXCL10の受容体であるCXCR3の炎症誘導への関与を検証したところ、Psmb8-KIマウスにCXCR3阻害剤を投与、またPsmb8-KI ;Cxcr3欠損マウス、Psmb8-KI; Cxcl10欠損マウスにイミキモド塗布した実験では、イミキモド塗布による炎症を完全には抑えられないものの、Psmb8-KI関連マウスと野生型マウスの炎症の差がほとんどなくなることが明らかになった。これらの結果は、PRAAS患者を治療するための新しい分子標的としてCXCR3-CXCL10軸を示唆するものである。
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