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2020 年度 実施状況報告書

DNA脱メチル化酵素Tetによる免疫寛容メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K08883
研究機関九州大学

研究代表者

田中 伸弥  九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (80462703)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード自己免疫疾患 / 免疫寛容 / Tet分子
研究実績の概要

これまでの研究において、B細胞特異的なTet2/Tet3分子共欠損によって、自己寛容の破綻が引き起こされ、その結果、自己免疫反応、及び、自己免疫疾患が誘導されることが示された。その自己寛容の破綻については、B細胞における副刺激分子CD86の高発現が一因となる可能性を明らかにしてきた。従って、当該年度においては、Tet分子によるCD86発現制御について検討を行った。Tet分子は、DNA脱メチル化酵素として同定された為、まずは、野生型もしくは、Tet2/Tet3共欠損B細胞におけるDNAメチル化パターンを1塩基レベルで解析した。その結果、野生型と比べ、Tet2/Tet3共欠損B細胞においては、ゲノムDNA領域全体として、メチル化DNAの集積が認められた。その中でも特にイントロン等、タンパク質非コード領域におけるメチル化DNA集積が、亢進していた。よって、Tet2/Tet3は、B細胞においてもDNA脱メチル化酵素して機能しているだけでなく、転写調節領域のメチル化を制御することにより転写制御に関わっていることが示唆された。CD86遺伝子座においては、DNA脱メチル化は、プロモーター、イントロン1、CD86遺伝子5'領域に認められ、CD86遺伝子5'領域の脱メチル化は、Tet分子依存的であった。一般的に、プロモーター領域のDNAメチル化は、転写抑制に寄与している為、CD86遺伝子イントロン1におけるTet分子依存的DNA脱メチル化は、間接的にCD86遺伝子発現制御に関与している可能性が高いと考えられた。一方で、Tet分子は、ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) を標的遺伝子座に集積させることで転写抑制に寄与していることが報告されている。従って、CD86遺伝子座において、HDAC結合を検討した所、プロモーター、イントロン1領域におけるHDAC集積は、Tet2/Tet3依存的であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Tet2/Tet3共欠損によるB細胞の自己寛容破綻のメカニズムの解明を目指し、当該年度においては、B細胞においてTetが、分子レベルでどのような役割を担うか明らかにすることが目標であった。研究実績でも述べた通り、Tet2/Tet3は、B細胞においてもDNA脱メチル化酵素として機能していることが明らかにされた。また、Tet2/Tet3は、HDACをCD86遺伝子座に集積させる役割を担うことも明らかになった。従って、当該年度の目標を達成していると考えており、本研究計画は、概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

研究概要でも述べたが、Tet2/Tet3は、B細胞においてもDNA脱メチル化酵素として機能していることが明らかにされ、CD86遺伝子座においてもTet分子依存的な脱メチル化領域が存在していた。しかし、これが直接的にCD86遺伝子の転写抑制に寄与しているというよりは、間接的に何らかの役割を担っている可能性が高い。一方で、Tet分子は、HDACをCD86遺伝子座に集積させる機能を有することが明らかになった。今後は、これらの知見を基にして、詳細なTet分子によるCD86遺伝子転写制御メカニズムを明らかにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Tet2 and Tet3 in B cells are required to repress CD86 and prevent autoimmunity2020

    • 著者名/発表者名
      Tanaka, S. Ise, W. Inoue, T. Ito, A. Ono, C. Shima, Y. Sakakibara, S. Nakayama, M. Fujii, K. Miura, I. Sharif, J. Koseki, H. Koni, P. A. Raman, I. Li, Q. Z. Kubo, M. Fujiki, K. Nakato, R. Shirahige, K. Araki, H. Miura, F. Ito, T. Kawakami, E. Baba, Y. Kurosaki, T.
    • 雑誌名

      Nature Immunology

      巻: 21 ページ: 950-961

    • DOI

      10.1038/s41590-020-0700-y

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Tet DNA demethylase is required for plasma cell differentiation by controlling expression levels of IRF42020

    • 著者名/発表者名
      Fujii, K. Tanaka, S. Hasegawa, T. Narazaki, M. Kumanogoh, A. Koseki, H. Kurosaki, T. Ise, W.
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 32 ページ: 683-690

    • DOI

      10.1093/intimm/dxaa042

    • 査読あり
  • [学会発表] Role of Ten eleven translocation in B cell self tolerance2020

    • 著者名/発表者名
      Shinya Tanaka
    • 学会等名
      The 15h International Symposium of the Institute Network for Biomedical Sciences
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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