研究実績の概要 |
これまでに、B細胞特異的Tet2、Tet3欠損 (TetbDKO) マウスでは、リンパ球を含めた免疫細胞の自然発生的な活性化、自己抗体産生、腎障害などを伴った自己免疫疾患が引き起こされることが明らかになっており、これは、B細胞受容体による抗原認識依存的に生じていた。従って、B細胞がどのような抗原を認識しうるのかについて、自己抗原アレイ解析を用いて検討したところ、二重鎖DNA、ヒストン等を含めた多様な自己抗原を認識する抗体が産生されていることが明らかになった。また、本モデルマウスでは、T細胞の活性化も生じているが、そのメカニズムを検討する為、TetbDKOマウスにB細胞特異的MHCクラスII欠損を導入することによって、ほぼ完全にCD4+T細胞の活性化、及び、免疫細胞の活性化は抑制されていた。従って、B細胞受容体で認識した抗原 (恐らく自己抗原)をCD4+T細胞に提示し、活性化させることが、自己免疫疾患の発症に重要であることが示された。さらに、B-T細胞間相互作用によって、CD4+T細胞を活性化させるには、CD86が必要であることを以前に明らかにしているが、疾患発症前におけるCD86分子に対する中和抗体投与によって、部分的ではあるが、T細胞の活性化だけではなく、疾患病態も部分的に改善することが明らかになった。以上のことから、B細胞が自己抗原を認識した際、Tet2, Tet3分子が欠損することによって、CD86発現が増強、遷延化することで、自己反応性CD4+T細胞が活性化し、それに伴って、他の免疫細胞の活性化、増殖が起こり、自己抗体産生、組織破壊が生じることで自己免疫疾患が引き起こされたものと考えられる。
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