関節リウマチの精密医療の実現を目指す多角的な病態解析研究

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K08886
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 川上 純 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90325639)
• 研究分担者: 古賀 智裕 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (90537284) ; 玉井 慎美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (60380862) ; 川尻 真也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (20457576) ; 千葉 恒 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (00457574) ; 佐藤 俊太朗 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20738926) ; 大山 要 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (50437860)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 関節リウマチ / 関節画像評価 / 滑膜炎 / 骨破壊 / バイオマーカー / ACPA / コラーゲン誘発関節炎 / イムノフェノタイピング

研究実績の概要

関節リウマチ（RA）の関節傷害は滑膜増殖、関節裂隙狭小化、骨びらんに特徴づけられる。これら3つの病変はお互いに関連し、多くのエフェクター細胞・分子が作用するが不明な点も多く、今回の多角的な研究を計画した。プロトコールに準じてRA症例を登録しサンプリングを行い、また、これを継続中である。2020年度は超音波（US）、MRI、血清バイオマーカーを中心とした解析において：1.生物学的製剤アバタセプトの有効性が自己抗体である抗Ro/SSA抗体存在で減弱することを明らかとし、これはACPA存在で層別化した解析とは逆のデータであり、この機序をサイトカインプロファイルから探索中である。2.臨床的寛解と超音波寛解を達成する患者群では患者背景プロファイルが異なることを明らかとし、この差異をサイトカインプロファイルから探索中である。3.USで評価する関節数を約1/4に減じても十分に関節炎活動性を評価できることを明らかとした。これは実臨床において重要であるが、この基盤をサイトカインプロファイルから探索中である。HR-pQCTを加えた解析において：4.アバタセプト、デノスマブ、JAK阻害薬での治療経過での症例数（検体数）が目標数に到達した。5.解析はまだ限定的であるが、これら分子標的治療薬群ではコントロール群（MTXなどのcsDMARDs群）と比較して骨びらんの進展が抑制されていることが示されている。現在、HR-pQCT指標の解析とサイトカインプロファイル解析を進めている。培養細胞および動物実験において：6.コラーゲン誘発関節炎を用いて関節炎修飾因子を評価中であり、その系における上記1.-5.で明らかとなった分子の発現を、炎症と骨破壊の両面から解析中である（これらが協調的に、もしくは、独立的に進展する可能性がある）。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度のpreliminaryな解析で、今回の研究計画における各項目は多角的ではあるがリーズナブルで、評価に十分に値することが明らかとなったが、2020年度にはこれらを用いて評価するほぼ十分な臨床検体数を集積することが出来た。また、成果についても上述したように、数編の原著論文を報告出来た。この中で注目すべき（解決すべき）クリニカルクエスチョンが抽出され、これらを含めてのRA病態への追及を、血清サイトカインプロファイル、in vitro細胞実験、コラーゲン誘発関節炎実験などで、次年度は解析予定である。新規自己抗体については、LC-MS/MS解析およびアイソタイプ別のACPAと抗CarP抗体（最近は総括してAMPAと呼称されることもある）、また、糖鎖修飾型ACPA-IgGにおいてもRA別検体で十分に解析可能であることを明らかにしており（data not shown）、次年度は本研究に用いる検体で解析予定である。特に、今まで詳細なデータがほとんどないHR-pQCT研究であるが、2020年度内に、HR-pQCTを用いたコホートは十分な解析検体数が集積され、US、MRI、血清バイオマーカーを組み合わせた統合解析の結果に期待している。よって、2020年度は“（２）おおむね順調に進展している”と評価した。今後は蓄積された臨床データと臨床検体の解析を進め、in vitro細胞実験や関節炎動物実験モデルでのデータを取り込み、イムノフェノタイピングを含めた新たな抗リウマチ薬の治療反応性アルゴリズムの確立を目指す。

今後の研究の推進方策

RA症例の登録は順調に推移しているが、この進捗を管理する。これら症例の画像データ、イムノフェノタイピング、バイオマーカーは総合的・統合的に評価する。また、これらヒトでのデータを関節炎動物実験モデル（コラーゲン誘発関節炎）に応用し、新たな抗リウマチ薬の治療反応性アルゴリズムの確立を目指す。そのために研究代表者を中心とする情報交換を密にし、全体の進捗管理を行う。

次年度使用額が生じた理由

（理由）当初の計画より少ない試薬類で実験が遂行できたため。
（使用計画）令和2年度に確保した検体の解析費用に充てる。

研究成果

• [雑誌論文] Effectiveness and safety of non-tumor necrosis factor inhibitor therapy for anti-human T-cell leukemia virus type 1 antibody-positive rheumatoid arthritis (2021)
  • 著者名/発表者名: Endo Y, Fukui S, Umekita K, Suzuki T, Miyamoto J, Morimoto S, Shimizu T, Koga T, Kawashiri SY, Iwamoto N, Ichinose K, Tamai M, Origuchi T, Okada A, Fujikawa K, Mizokami A, Matsuoka N, Aramaki T, Ueki Y, Eguchi K, Kariya Y, Hashida Y, Hidaka T, Okayama A, Kawakami A, Nakamura H.
  • 雑誌名: Modern Rheumatology 巻: 31 ページ: 972～978
  • DOI: 10.1080/14397595.2020.1847802
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Contributing factors of clinical outcomes at 1 year post-diagnosis in early rheumatoid arthritis patients with tightly controlled disease activity in clinical practice: a retrospective study (2021)
  • 著者名/発表者名: Kawashiri SY, Endo Y, Okamoto M, Tsuji S, Shimizu T, Sumiyoshi R, Koga T, Iwamoto N, Ichinose K. Tamai M, Nakamura H, Origuchi T, Kawakami A.
  • 雑誌名: Modern Rheumatology 巻: 31 ページ: 343～349
  • DOI: 10.1080/14397595.2020.1795392
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Current insights and future prospects for the pathogenesis and treatment for rheumatoid arthritis (2021)
  • 著者名/発表者名: Koga T, Kawakami A, Tsokos GC.
  • 雑誌名: Clinical Immunology 巻: 225 ページ: 108680～108680
  • DOI: 10.1016/j.clim.2021.108680
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Utility of a simplified ultrasonography scoring system among patients with rheumatoid arthritis (2021)
  • 著者名/発表者名: Endo Y, Kawashiri SY, Morimoto S, Nishino A, Okamoto M, Tsuji S, Takatani A, Shimizu T, Sumiyoshi R, Igawa T, Koga T, Iwamoto N, Ichinose K, Tamai M, Nakamura H, Origuchi T, Kawakami A, et al.
  • 雑誌名: Medicine 巻: 100 ページ: e23254～e23254
  • DOI: 10.1097/MD.0000000000023254
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Significance of anti-Ro/SSA antibodies in the response and retention of abatacept in patients with rheumatoid arthritis: a multicentre cohort study (2021)
  • 著者名/発表者名: Endo Y, Koga T, Kawashiri SY, Morimoto S, Nishino A, Okamoto M, Tsuji S, Takatani A, Shimizu T, Sumiyoshi R, Igawa T, Iwamoto N, Ichinose K, Tamai M, Nakamura H, Origuchi T, Ueki Y, Yoshitama T, Eiraku N, Matsuoka N, Okada A, Fujikawa K, Hamada H, Tsuru T, Nagano S, Arinobu Y, Hidaka T, Tada Y, Kawakami A.
  • 雑誌名: Scandinavian Journal of Rheumatology 巻: 50 ページ: 15～19
  • DOI: 10.1080/03009742.2020.1772361
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Fluorescence optical imaging in patients with active rheumatoid arthritis: a comparison with ultrasound and an association with biomarkers (2021)
  • 著者名/発表者名: Kawashiri SY, Nishino A, Shimizu T, Takatani A, Umeda M, Koga T, Iwamoto N, Ichinose K, Tamai M, Nakamura H, Origuchi T, Maeda T, Kawakami A.
  • 雑誌名: Scandinavian Journal of Rheumatology 巻: 50 ページ: 95～103
  • DOI: 10.1080/03009742.2020.1794028
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Effects of cigarette smoking and human T-cell leukaemia virus type 1 infection on anti-citrullinated peptide antibody production in Japanese community-dwelling adults: the Nagasaki Islands Study (2020)
  • 著者名/発表者名: Kawashiri SY、Tsuji Y、Tamai M、Nonaka F、Nobusue K、Yamanashi H、Maeda T、Kawakami A
  • 雑誌名: Scandinavian Journal of Rheumatology 巻: - ページ: 1～4
  • DOI: 10.1080/03009742.2020.1810310
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 関節リウマチの発症リスク因子 (2020)
  • 著者名/発表者名: 玉井慎美.
  • 雑誌名: リウマチ科 巻: 64 ページ: 387～395
• [雑誌論文] Non-TNF inhibitor switchers versus TNF inhibitor cyclers from multicentre rheumatoid arthritis ultrasonography prospective cohort in Japan (2020)
  • 著者名/発表者名: Endo Y, Kawashiri SY, Morimoto S, Nishino A, Okamoto M, Tsuji S, Takatani A, Shimizu T, Sumiyoshi R, Igawa T, Koga T, Iwamoto N, Ichinose K, Tamai M, Nakamura H, Origuchi T, Ueki Y, Yoshitama T, Eiraku N, Matsuoka N, Okada A, Fujikawa K, Hamada H, Tsuru T, Nagano S, Arinobu Y, Hidaka T, Tada Y, Kawakami A.
  • 雑誌名: Immunological Medicine 巻: 43 ページ: 115～120
  • DOI: 10.1080/25785826.2020.1757920
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] MRI in rheumatoid arthritis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Tamai M，Uetani M，Aoyagi K，Eguchi K，Kawakami A.
  • 学会等名: 22nd Asia Pacific League of Associations for Rheumatology Congress (APLAR2020)
  • 国際学会
• [学会発表] リウマチ診療におけるICTとAIの活用. (2020)
  • 著者名/発表者名: 川尻真也, 川上 純.
  • 学会等名: 第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
• [学会発表] 九州地区多施設共同前向きRA超音波コホート研究. (2020)
  • 著者名/発表者名: 川尻真也, 遠藤友志郎, 川上 純.
  • 学会等名: 第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
• [学会発表] Inhibition of calcium/calmodulindependent protein kinase IV in rheumatoid arthritis: Dual effect on Th17 cell activation and osteoclastogenesis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Koga T, Sumiyoshi R, Shimizu T, Igawa T, Kawashiri S, Iwamoto N, Ichinose K, Tamai M, Nakamura H, Origuchi T, Kawakami A.
  • 学会等名: 第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
• [学会発表] HR-pQCTを用いた関節リウマチ治療経過における関節構造変化の解析. (2020)
  • 著者名/発表者名: 岩本直樹, 渡邉之助，白石和輝，大木 望，千葉 恒，古賀 智裕，川尻真也, 一瀬邦弘，玉井慎美，中村英樹，折口 智樹，尾崎 誠，川上 純.
  • 学会等名: 第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
• [学会発表] 住民健康診断における関節リウマチと抗CCP抗体に着目した口腔内細菌叢解析. (2020)
  • 著者名/発表者名: 辻 良香，玉井慎美，川尻真也，野中文陽，有馬和彦，梅津彩香，原 万怜，道辻 徹，西畑伸哉，岡本百々子，遠藤友志郎，辻 創介，髙谷亜由子，井川 敬，住吉玲美，清水俊匡，古賀智裕，岩本直樹，一瀬邦弘，中村英樹，折口智樹，川上 純.
  • 学会等名: 第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
• [学会発表] 各種JAK阻害薬の自然免疫系細胞JAK2シグナル伝達に与える影響. (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤田雄也，松本聖生，天目純平，古谷牧子，松岡直紀，浅野智之，佐藤秀三，小林浩子，渡辺浩志，川上 純，右田清志.
  • 学会等名: 第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
• [学会発表] 抗HTLV-1抗体陽性関節リウマチにおける非TNF阻害薬の臨床効果と安全性. (2020)
  • 著者名/発表者名: 遠藤友志郎, 中村英樹, 梅北邦彦, 岡田覚丈, 藤川敬太, 荒牧俊幸, 松岡直樹, 植木幸孝, 日髙利彦, 川上 純
  • 学会等名: 第117回日本内科学会総会・講演会
• [学会発表] Association between the serologic status of isotype- specific autoantibodies and therapeutic efficacy in rheumatoid arthritis Patients treated with abatacept：A prospective ultrasound cohort study in JAPAN. (2020)
  • 著者名/発表者名: Kawashiri SY, Endo Y, Nishino A, Shimizu T, Ueki Y, Eiraku N, Okada A, Matsuoka N, Yoshitama T, Nakamura H, Tamai M, Origuchi T, Toes R, Huizinga T, Kawakami A.
  • 学会等名: eular 2020 EUROPEAN E‐CONGRESS OF RHEUMATOLOGY
  • 国際学会