本研究は著効を示す治療法のない指定難病のシェーグレン症候群(SS)に対する根治療法の開発のため、研究代表者が所有しているBAFFシグナル阻害作用を有する化合物を用いてSS患者単球が関わるB細胞の活性化におけるBAFFシグナルとNavシグナルのクロストークの詳細解明を目的とした。具体的には下記に示す成果を得た。 1)SS患者末梢血単球では健常人、未治療全身性エリテマトーデス(SLE)患者および未治療関節リウマチ(RA)患者と比較してBAFF受容体(BR3)とNav1.7チャンネル発現が遺伝子レベルおよびタンパクレベルで有意に上昇していた。2)SS患者単球でのBR3およびNav1.7チャンネル発現量には有意な正の相関を認めた。このことからBAFFシグナルとNavシグナルのクロストーク機構はSSへの特異的機構であることが推測された。3)SS患者単球ではBAFF刺激によりNav1.7チャンネル発現が上昇し、Nav1.7チャンネル阻害剤を加えることによりBAFFによる単球からのIL-6産生が抑制された。4)単球にNav1.7チャンネル阻害剤存在下でBAFF刺激を加えるとBAFFシグナル分子の一つであるNF-kB経路に関与する分子の発現が低下した。5)患者末梢血単核球に対し、Nav1.7チャンネル阻害剤の存在下においてBAFFを含むB細胞刺激を加えた場合、細胞からのIgG産生量の減少を認めた。6)BAFFを含む刺激を加えた患者末梢血単核球ではB細胞分化とNF-kB経路に関わる分子の発現抑制が認められた。8)研究代表者が所有するNavチャンネル阻害作用を有する化合物AおよびBは自己抗体産生病態モデルマウスへの腹腔内投与により脾臓リンパ球中のB細胞の減少を誘導した。これらの成果よりNavシグナルとBAFFシグナルの共通分子はNF-kB経路およびB細胞の分化に関わる分子であることが示された。
|