研究課題
①当院の全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血の単核球(PBMC)を用いて、数種類作成された抗TLR7抗体の中でより感受性と特異性が高い抗TLR7抗体をフローサイトメトリーで評価を行った。その中で、より特異性が高いと思われる3種類のモノクローナル抗体を用いて末梢血単核球の解析を行い、異なる免疫担当サブセットで発現を調べた。その結果、骨髄球系の細胞集団においてTLR7の発現がSLE患者で高いことを確認した。さらに好中球~単球サブセットにおいて高発現していることを確認した。いくつかのサブセットにおいては、細胞内のみならず、細胞表面にもTLR7の発現を認めたことを確認した。また、SLE患者保存血清を用いてSLE患者血清中の可溶性TLR7の発現をサンドイッチELISA法により解析した。SLE患者血清では健常者と比べて可溶性TLR7の発現は低い結果となった。これらのSLE患者の病態、病期、治療薬について臨床データと合わせて解析している。TLR8については、SLE患者と健常者では有意な差は認めなかった。②SLEのモデルマウスに対する抗TLR7抗体投与による研究を同時に行っている。TLR7は通常は細胞内に存在しているが、前述のようにSLEでは細胞表面にも発現し、病態形成に影響している可能性があり、in vivoでの効果を確認した。その結果腎炎を著明に抑制し、生存率を延長させたことを確認し、論文として発表した。今後抗ヒトTLR7抗体が新規治療薬として使用され有効性を示す可能性が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
ヒトにおける解析結果から、マウスへの抗体治療へつながり、充分な有効性を示したことから、新規治療薬としての開発へ前進したと考える。さらにヒトにおけるTLR7の発現についてより詳細に調べることで、どういった集団のSLEに対して有効性を発揮できるのか検討することでさらに前進できると思われる。
マウスでの解析結果を受け、ヒトにおけるTLR7の発現をより詳細に調べることにより、SLEのなかでもどのような免疫フェノタイプを有する集団に対して高い効果を発揮できるのかを検討していく。SLEは個々の症例によってその臨床症状も多彩であるため、特定の集団に分けることで解析可能な数が少なくなるという側面がある。そのため解析にも時間を要するため継続的な検討を要する。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、旅費が大幅に削減されたこと、コロナ対応に費やす時間が多く十分な時間と労力を研究に割くことことが困難であったため。研究を再開し、得られた結果をもとに学会報告を行い、論文化していく。
すべて 2022
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Rheumatology
巻: 61 ページ: 4445~4454
10.1093/rheumatology/keac101
Regenerative Therapy
巻: 20 ページ: 18~25
10.1016/j.reth.2022.03.002