昨年度は、NET 形成過程で細胞内に産生される酸化リン脂質は、好中球エラスターゼと共に核に作用して核の膨潤に関与していることを明らかにした。本年度は、細胞外に存在する酸化リン脂質のNET誘導機構について検討を行なった。FDA承認化合物や東京医科歯科大学化合物ライブラリーを用いてNET形成阻害剤のスクリーニングを行い、酸化リン脂質によるNET形成を阻害する薬剤としてチロシンキナーゼ阻害剤を始めとして複数得た。また、同定した阻害剤が、リポ多糖をマウスに経鼻投与することにより肺に誘導されるNET形成も抑制すること、また、肺のがん転移を阻害することも見出した。さらに、同定した化合物の標的分子の同定も試み、チロシンキナーゼの一種であるBTKが標的分子であることをBTK阻害剤やBTK欠損株を用いて明らかにした。
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