研究課題/領域番号 |
19K08895
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
宮部 斉重 日本医科大学, 先端医学研究所, 講師 (70632313)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Arthritis / Complement / Transcytosis / Chemokine |
研究実績の概要 |
III型アレルギーとは、免疫複合体が組織へ沈着し炎症を誘導する病態で、関節リウマチを含む様々な自己免疫疾患で見られる。III型アレルギーにおいて、好中球は早期に免疫複合体沈着部位へ遊走し、炎症を惹起する重要な役割を担っている。近年、我々は免疫複合体誘導関節炎において補体受容体C5aR1が“直接”好中球の遊走を制御している事を見出した。一方で、組織中へ放出された補体成分C5aやケモカインがどのように組織から血管内腔へ運搬され、循環している好中球を組織内へ遊走させるのか、その機序は不明である。 我々は近年、atypical complement receptor C5aR2とatypical chemokine receptor 1 (ACKR1)が好中球の遊走を制御し 免疫複合体誘導関節炎へ関与する事を見出した。これらの遺伝子欠損マウスを用いて作成した骨髄キメラマウスに関節炎を誘導すると、非造血細胞由来のC5aR2、ACKR1が関節炎の発症に必須であった。さらに2光子励起顕微鏡を用いて関節内を観察すると、C5aR2が組織中のC5aを血管内腔へ輸送し、C5aR1を介して好中球の血管内接着を促進し、ACKR1により血管内腔へ輸送されたCXCR2リガンドがCXCR2を介して好中球の血管外漏出を誘導することがわかった。 以上の実験から、atypical chemoattractant receptorによるchemoattractant分子輸送機序が明らかになった。atypical chemoattractant receptorとclassical chemoattractant receptorによる好中球遊走の協調制御機構は、自己免疫疾患における新規標的として期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに研究は進行し、学術雑誌へ成果も発表できている。
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今後の研究の推進方策 |
我々はAtypical Chemoattractant ReceptorがChemoattractant分子を血管内腔へTranscytosisしている事を発見した。しかし、C5aR2やACKR1によるTranscytosisの機序は全くわかっていない。今後はC5aR2、ACKR1のTranscytosisの機序を解明する。また、AtypicalとClassical Chemoattractant Receptorの相互作用が関節炎の発症に重要である事を我々は見出したが、関節組織特異的なのか、それとも他臓器の炎症でもそれらは重要なのか全く不明である。他の炎症性疾患などと比較しそれらを解明していく予定である。
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