研究実績の概要 |
我々は「Layilinを介したTNF-α誘導性上皮間葉移行(EMT)様変化がRA滑膜細胞の異常増殖の本態である」との仮説を立てた。本研究ではLayilin遺伝子欠損マウスおよびヒト滑膜細胞等を用いて本仮説を実証することを目指し、Layilinを標的としたRA滑膜増殖抑制治療法の開発につなげたい。 In vitroの実験では、以前、浸潤性の高い神経膠腫由来細胞株A172細胞で、LayilinがSNAI1を介して、EMT様変化を促進し、浸潤能を高めることを報告した(Kaji T, 2019)。この細胞株を用いて、さらにLayilinがcyclin-dependent kinase 1 (CDK1)とdynamin-related protein1 (DRP1)の活性化を介して、ミトコンドリア形態を長いチューブ状のfusion型から短い粒状のfission型に変え、細胞の浸潤能を高める可能性を報告した(Tsutiya A, 2020)。また、複数の細胞株でLayilinの発現抑制により細胞増殖が抑制されることを見出した。このように、これらの結果は、Layilin がEMTおよびその結果起こる細胞の増殖能・浸潤能の獲得に深く関わることを強く示唆するものであった。滑膜細胞株について同様の機序があると考えられ現在検討している。 In vivoの実験では、CRISPR/Cas9法により作製したLayilin欠損マウスを用いて、まず、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルの解析を行った。関節炎スコアはLayilin欠損マウスの野生型と比較して有意な差は認められなかった。また、抗Type IIコラーゲン抗体価も有意な差は認められなかった。今後、他の関節炎モデルあるいはLayilin過剰発現マウスを用いてLayilinの関節炎における役割を検討する予定である。
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