研究課題
B細胞やB細胞より産生される抗体は、液性免疫や獲得免疫の一部の防御機構として中心的な要素となる。また、B細胞はSLEなどの自己免疫疾患においても中心的な役割を担う。アミノ酸は様々な代謝プロセスにおいて重要な成分となる。しかしながら、アミノ酸のB細胞機能発現における重要性やSLE病態への関与については依然不詳である。今回、ヒトB細胞において、必須アミノ酸であるメチオニン、次点でロイシンが形質芽細胞分化に重要であることを見出した。またアミノ酸輸送体であるCD98やLAT1は形質芽細胞分化過程においてシーソーのようなバランスで切り替わること、つまりCD98が誘導される一方でLAT1の発現が低下することが明らかとなった。BCRとmTORC1の両シグナルはメチオニンに感受性があるのに対し、mTORC1シグナルはロイシンにのみ感受性を認めた。メチオニン存在下において、BCRとmTORC1の活性化は相乗的にEZH2を誘導し、BACH2の遺伝子発現領域に結合してH3K27me3を誘導することでBACH2発現を抑制、結果としてBLIMP1、XBP1の発現、形質芽細胞分化を誘導した。SLE患者B細胞におけるアミノ酸関連分子の発現や臨床的背景への関連を検討したところ、SLE患者CD19+細胞においてはCD98とEZH2が過剰に発現し、有意に相関した。特にB細胞におけるEZH2発現レベルは疾患活動性や自己抗体と相関した。以上の結果より、メチオニンはメチルトランスフェラーゼであるEZH2発現を介して形質芽細胞分化において重要な役割を担うとともに、SLE病態に深く関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
患者検体を用いた検討で、SLE患者B細胞における必須アミノ酸の輸送体の発現亢進、mTORC1の活性化や病態への関与が確認できた。またIn vitroにおいてもB細胞分化において必須アミノ酸、特にメチオニンの重要性が確認できた。また必須アミノ酸メチオニンがEZH2というメチルとランスフェラーゼを誘導、BACH2の遺伝子転写領域に結合しヒストン修飾をもたらし、形質芽細胞分化を誘導していることも確認できた。以上のように必須アミノ酸のB細胞分化への深い関与、そのメカニズム、SLE病態への関与が明らかにできており、予想より早い経過で結果が得られていると考えた。
必須アミノ酸をはじめとする免疫細胞代謝の変化を介したB細胞分化誘導機序を、In vitroでさらに詳細な検討する方針である。またSLE患者B細胞分化における必須アミノ酸、免疫細胞代謝の病態への関与(疾患活動性や自己抗体産生)についてもさらに検討を進める予定である。
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Arthritis Rheumatol.
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10.1002/art.41208.