研究課題
RAにおいてB細胞は病態形成に重要な役割を担う。RA患者B細胞における代謝調節因子mTOR活性化の有無やその病態への関与を検討した。健常人31名、RA 86名の末梢血単核球を分離、B細胞におけるmTORのリン酸化、ケモカイン受容体の発現、また血清ケモカイン濃度を解析した。In vitroでRA患者由来滑膜線維芽細胞 (FLS)、健常人およびRA患者末梢血B細胞を分離し、それらを用いて臨床検体で得られた結果の機序を検討した。RA患者末梢血では健常人に比しCXCL10 (CXCR3リガンド)濃度が高く、B細胞中のCXCR3+ memory B細胞の割合が低下していた。CXCL10濃度が高いRA症例では、CXCR3+ memory B細胞の割合が減少し、疾患活動性が高かった。TNF阻害剤加療1年後に、血清CXCL10濃度低下とともに、治療前に減少していたCXCR3+ memory B細胞の割合が増加した。In vitroでRA患者FLSにおけるTNF-α依存性CXCL10産生はTNF阻害剤で抑制された。RA患者では健常人に比しB細胞のmTORリン酸化が亢進し、特にCXCR3+ memory B細胞で選択的に亢進していた。CXCR3+ memory B細胞におけるmTORリン酸化は疾患活動性と正相関した。In vitroでB細胞のmTORリン酸化はIL-6産生、RANKL発現に関与した。すなわち、RA患者CXCR3+ memory B細胞におけるmTOR 活性化はIL-6産生やRANKL発現を介して疾患活動性に深く関与した。TNF阻害剤はFLSによるCXCL10産生抑制を介しCXCR3+ memory B細胞の局所浸潤を制御し、疾患活動性改善に寄与した可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
昨年はSLE病態におけるB細胞免疫代謝の重要性を報告したが、同じ自己免疫疾患であるRAにおけるB細胞免疫代謝の重要性についても昨年度同様に検討を行った。RAでは、SLEにおけるB細胞での免疫代謝動態とは異なる形で疾患に深く関与していることが明らかになった。以上のように、自己免疫疾患におけるB細胞の免疫代謝異常と病態への関与を異なる疾患でも順調に解明できている。
我々は、リンパ球活性化などその質的異常を検出する方法として「免疫代謝」という新しい概念に着目してきた。免疫細胞の活性化・分化には、代謝変容による膨大なATP等のエネルギー産生や生体構成成分の生合成が必要となる。我々はリンパ球における代謝亢進がSLE、RAなど様々な自己免疫疾患の病態と深く相関することを明らかにした 。しかし自己免疫病態における炎症性サイトカイン経路と細胞内代謝との連関、その病態への関与は依然不詳である。今後臨床検体を用いてRA、SLE患者リンパ球におけるサイトカイン-JAK-STAT経路による代謝調整機序(重要な調節因子)の解明、その治療反応性との関連を評価、in vitroの検討でその詳細な調整機構を解明していく方針である。
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Rheumatology (Oxford).
巻: in press ページ: in press
10.1093/rheumatology/keab229.
医学のあゆみ
アレルギーの臨床.
巻: 41(2) ページ: 50-54
Frontiers in Immunology
巻: 11 ページ: 593103
10.3389/fimmu.2020.593103