研究課題
樹状細胞(Dendritic Cell:DC)における細胞質型チロシン脱リン酸化酵素Shp-1の機能解析を目標にCre-loxPシステムを用いてDC特異的にShp-1を欠損するコンディショナルノックアウトマウス(Shp-1 CKO)を作製した。40週齢を超えるShp-1 CKOではDCの浸潤を伴う自己免疫性腎炎を生じ、このDCは炎症性サイトカインを強く産生していた。また、T細胞からのIFNγの産生亢進も見られた。このように、DCに発現するShp-1はDC自体の機能とT細胞の機能を抑制性に制御することが明らかになっている。ところで近年、2型糖尿病(DM)の病態形成においては、免疫担当細胞の機能異常に注目が集まっている。特に、マウスの2型DMモデルによる解析では、DCおよびT、B細胞に関して異常が報告されている。そこで、本研究課題においては、DCがT、B細胞などの多種類の免疫細胞をコントロールする事実に着目し、高脂肪食を給餌することにより発症するマウス2型糖尿病のモデル(HFD [High Fat Diet] モデル)をShp-1 CKOで行った。そして、Shp-1の欠損により活性型となったDCが糖代謝に与える影響を検討した。その結果、高脂肪食の給餌によりShp-1 CKOは肥満になったが、その程度はコントロールマウスと同程度であった。しかし、グルコースやインスリンを負荷して耐糖能を検討したところ、いずれの試験においてもShp-1 CKOの耐糖能障害はコントロールマウスに比べて軽度であった。
2: おおむね順調に進展している
本年度に得られた解析結果は実験開始時の予想に反するものであった。次年度以降においては、DMを発症したShp-1 CKOマウスの内臓脂肪と筋肉量を測定することや、肝臓の病理組織学的な検討を行う。さらに、代謝性マーカーや代謝に関するホルモンを測定する。
耐糖能の悪化に関し、皮下脂肪より内臓脂肪の寄与が大きいことがマウスのHFDモデルによる解析から明らかになっている。従って本年度は、本学に設置済みの実験動物用のX線CTであるlatheta LCT-200を用いて、DMとなったマウスの皮下脂肪と内臓脂肪を定量する。さらに筋肉量も測定する。免疫学的な解析に先行して生理学的な検討を進める予定である。
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Biochem Biophys Rep.
巻: 22 (100741) ページ: 1-8
10.1016/j.bbrep.2020.100741